父親が子供を虐待。そのとき母親ができること

過去の私
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 父親が子供を虐待していた事件が明るみに出ると、「母親は何をしていたんだ」という声があがる。

 でも、モラハラ家庭の母親としてどうしたらいい? 「逃げろ」って言われても、すぐには思い切れない。 

今の私
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「逃げる」以外にできること、つまり同居したままできることを、複数の本から拾い集めるね。

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母親ができるちょっとのこと

 この記事では、子供を虐待するDV夫・モラハラ夫と生活を共にしながら、母親が子供のためにできることを挙げます。DV夫やモラハラ夫であっても、別れられない事情があったり、いざ別れる決心をしても準備期間が必要であったりします。そんなときに利用できる情報を書籍などから集めました。

 まずは母親に勇気を与える言葉を。

 子どもに手を差し伸べ、援助するにあたって、さまざまな分野の職種がその役目を果たすことができますが、最大の援助を与えることのできるのは母親です。

 実際のところ、あなたにこの本を読むことでたった1つ気づいてほしいのは、あなたはすでに多くのことを子どもにしてきていること、経てきた段階の中で子どもをパートナーの攻撃性から保護していること、なぐさめ、愛情を注ぎ、あなたがいることで子どもの生活に大きな違いをもたらしていることの再認識なのです。

 いずれも『DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す――お母さんと支援者のためのガイド』(レビュー)という本からの引用です。

 この記事では、比較的簡単にできることを挙げましたが、これがすべてではありません。今後、この記事を改訂するなり、続編を公開するなりして、情報を充実させていく予定です。

毒父に対して子供を守るための秘密を持つ

 一番、簡単にできることが、子供(と自分)を守るための秘密を持つことです。お金も労力もかかりませんし、心理的な負担を感じる必要もありません。ウソや隠しごとはダメ、という 子供の頃から刷り込まれた価値観がありますが、子供と自分を守るという正義のほうが優先です。本から一節を引用します。

 父親が身体的暴力をふるったり、強迫したりするタイプの虐待者なら、母親と子どもは自分たちの安全を守るために彼に隠しごとをしなければならい場合があります。

『DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す――お母さんと支援者のためのガイド』
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 たとえば、中には「(子供を)見とけよ」などと言って、自分が不在のときに母親に子供を監視するよう命じる毒父もいます。これには馬鹿正直に従う必要なし。毒父相手にウソのストーリーを組み立てることが難しくても、毒父が怒りそうなことを黙っていることはできます。

子供といっしょにいる。寄り添う

 家族以外の「よその人」ほどの抑止力はありませんが、母親が子供といっしょにいるだけで毒父に対する一定の抑止になります。

 母親の目の前でも、毒父が堂々と子供に手を上げる。性的虐待をする。――ブログの体験談や、凄惨な事件の報道でも、こうした状況は稀です。突発的なできごとはあっても、母親の目を盗んで行われるケースをよく見かけます。その土壌として、子供のしつけ役や教育係をかって出ている毒父もちらほら。うちの毒父(私の元モラ夫)もそうでした。

 一方で、母親の存在自体が子供の安心感につながります。子供がある程度大きくなれば、同じ場所にいなくても心理的に寄り添う方法を考えられます。以下は、本からの抜粋です。

 部屋に閉じ込められたとき、わたしはドアの下に妹マリー宛てのメモ書きを忍ばせた。定期的にメモを回収しに来てくれるマリーは、母にわたしのメッセージを渡してくれた。
「ママに、こっちに来てって言って」
 (略)
 妹と母とのメッセージのやりとりは、わたしの唯一のコミュニケーション手段であり、わたしはそうしたやりとりから安心感を得た。それはわたしに残された外部との唯一の繋がりだった。

『父の逸脱――ピアノレッスンという拷問』
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子供を褒める。肯定する。認める

 毒親本で「親がちっとも認めてくれなかった」「ちょっとでも褒めてくれていたら」といった記述を目にしないことはありません。逆説的ですが、母親が子供を認めて肯定することで、少しは子供の気持ちも救われます。たとえ毒父が子供をけなしたり怒ったりしても。

 毒親に育てられた半生をつづった本から、両親が揃って褒めてくれた日を回想している部分を引用します。

 私は生まれたばかりの弟の顔をひとしきり見つめて満足すると、団地中を駆け回り、花や「マンナ」という赤ちゃん用ビスケットなど、母と弟のためにお祝いの品を買い集めた。そして病室に戻ると、父も母も私のことを「何て優しい子だ」と心底褒めてくれた。そんな経験は後にも先にもなかったから、この日は私にとって人生で一番幸せな日になった。

『私は親に殺された!――東大卒女性医師の告白』
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 ウチの毒父(私の元夫)は「この俺様を心の底から感服させられたら褒めてつかわす」という態度で、娘に接していました。結果、子供を褒めたことなんて一度もありません。「子供をほめる」という行為は、子供のためのものですよね。たとえ良いところが無いように見えても褒めるポイントをひねり出すものだ、ということを毒父様は理解していないようでした。

毒父がいないときは子供の自由にさせる

 毒父が不在のときくらい、そのくびきから子供を放って、自由に過ごさせます。

 以下のアドバイスは、進学塾の経営者によるものです。

 たとえば父親が子どもを追いつめてしまっている場合、母親はどんなスタンスでいるのがいいのだろうか。
「実際にそういう相談を受けることもあります。はっきり言って、そういうお父さんは変わりません。お父さんがいないと勉強しないという子どもの場合、『それでもいいです。お父さんがいなくてのんびりできるなら、のんびりさせてあげてください。それがお子さんにとって必要な時間なのです』とアドバイスします」

『ルポ 教育虐待――毒親と追いつめられる子どもたち』
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 そして子供が実際にどのように過ごしたのか、毒父には秘密を守ります。

毒父の言動をムダに肯定しない

 夫婦喧嘩や夫婦間の意見の対立を子供に見せるべきではない。パートナーの悪口を子供に言わない――こんなことが巷で言われていますが、それは普通の夫婦の場合だけです。

 私は元夫の毒父っぷりを児童家庭支援センターで相談をしていました(相談体験)。そこの相談員のアドバイスで強く印象に残っているのは「(子供に対して)お父さんの人格否定をするのはダメだけれど、よろしくない言動については感情的にならずに否定する」というものです。悪しき言動を黙認していたら、子供の善悪の価値観が狂っちゃいますからね。

 同様の主旨の記述を本の中にも見つけました(以下)。

パートナーの不適切な行動については、子どもに適量の情報を与える。

『DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す――お母さんと支援者のためのガイド』150ページ
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 この点はとっても重要だと個人的には思います。ただ、明確に触れている本は、ほとんで見かけません。逆説的になりますが、もう1件、他の本から引用します。

父親に暴力をふるわれたり、虐待されて母子が一緒に逃げてきた場合以外は、子供の前で父親の悪口を言ってはいけません。

『親の期待に応えなくていい』141ページ
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 これって、暴力をふるうような父親だったら、悪口を言うのも致し方ない、ってことですよね?

 また毒父のよろしくない言動について子供に否定することができなかったとしても、「パパの言うとおり」などと、わざわざ肯定する必要はありません。

食べ物を差し入れる

 毒父にバレない方法で、子供に食べ物や飲み物を差し入れます。以下はフランス人の著作からの引用です。

 わたしが昼食を抜きにされたとき、母とマリー(妹)は、食料をわたしの衣装ケースに忍ばせておいてくれた。ピザの切れ端、ひと切れのパン、ビスケットなどをナプキンに包んでセーターの下に隠し、その上に衣装を積んでおいてくれたのだ。深夜になってようやく寝かせてもらえるとき、母とマリーが隠しておいてくれたそれらの食料を見つけると少しほっとした。

『 父の逸脱――ピアノレッスンという拷問』
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 ピザ、パン、ビスケットが登場しますが、我が家ではラップに包んだおにぎりが定番でした。

情報収集をする

 ネットからでも本からでも、子供を守るために役立ちそうな情報を集めます。

 この記事をご覧になっている時点で、実施中ですね。

 よろしかったら、以下の記事もご覧ください。

どこかに(誰かに)相談する

 信頼できる人がいたら、思い切って打ち明けてみます。話を聞いてくれたり、何か助けてくれたりするかもしれません。

 相談できる人が周りにいなかったら、専門家に頼る手があります。私は児童家庭支援センターに問い合わせました(相談体験)。相談員は我が家に合った対策をいっしょに検討。身内に相談しても得られない情報もあり、「餅は餅屋」と思いました。

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言いたいこと

 私はモラハラ夫との同居時に、こうした「虐待していないほうの親」に向けた情報を得るのに苦労しました。当時の私に伝えたいことをまとめたのが、この記事です。

 根底には、外野から「逃げろ」「相談しろ」と唱えるだけでは実際的な助けにはならない、という怒りがあります。逃げるにも、相談するにも、心理的・経済的な壁があるんだYo!

 私は最終的には公的機関に相談して、モラハラ夫との離婚に至りました(相談体験離婚体験)。しかし、最初の段階では、自分でどうにかできないか、模索する毎日でした。

 どうにかしようと、ネットで検索しても「逃げろ」ばかり。逃げるのって、そんなに簡単か? 言っている人は、自分はすぐに生活を変えられるのか? 深刻なDV・虐待を扱っている本ほど、逃げることの難しさに理解を示しているように感じました(参考記事)。

 私は、虐待していないほうの親に向けた本を探しました。見つけられたのは1冊だけ。しかも10年以上前に発行された訳書で、今は入手しづらそうです。「もしや自分が毒親かも」と、不安に思う親に向けた本のほうがよっぽど多かった!

 その1冊の本のタイトルは『DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す――お母さんと支援者のためのガイド』(レビュー)。書かれている内容はまったく古びていません。読むと、励まされているような気持ちになりました。特に印象的だったのは、この記事の冒頭で引用した2文です。

 こんなふうに「虐待していないほうの親」にアプローチする情報があると、救われる子供もいると思います。そういう本であったり、公的機関の冊子であったりが出てこないかな……。

 需要はあるはず。モラハラ夫(に限らず攻撃してくる人全般)と共存することを前提に、妻が自分を守るための対策をまとめた『離れたくても離れられないあの人からの「攻撃」がなくなる本』(レビュー)は大人気なので。

 それと、手も出るタイプの暴力夫がいるときに、妻自身が取れる対応策(「逃げる」以外も)を挙げた本のレビューを、このサイトにアップしたときもアクセスが増えました。『殴られる女たち』(レビュー)というタイトルです。

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まとめ

この記事で取り上げた書籍
我が子が夫/妻に虐待されているときに読む記事

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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