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「パートI PTSDを引きおこす原因とその症状」と「パートII PTSDの対処の仕方と治療」の2部構成。虐待していない方の親など、家族が子供をケアするための情報もある。
近年日本で増えている大型の災害を経験した子供にも役立つ内容。
レビュー
PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害)を抱える10代の若者向けに、米国で書かれた本の訳書です。「パートI PTSDを引きおこす原因とその症状」と「パートII PTSDの対処の仕方と治療」の2部構成。戦争、テロ、事故、自然災害などの単発的な体験と並んで、継続的な虐待(特に性的虐待)による事例も扱っています。
「セルフケア」の本なので、10代の子供が自分でできる対策や、治療や相談先を選ぶ方法が挙げられています。さらに「第6章 必要なサポート」や「おわりに…周囲はどう接したらいいか」で、家族(や他の人)が子供をサポートする方法が詳しく示されています。
この本のエッセンスに触れている部分を、引用します。
この本は、PTSDを引きおこす、戦争、テロ、殺人事件や誘拐事件、災害、事故、虐待、捕虜や監禁、あるいは性的暴力など、さまざまなトラウマの残る体験を例としてとりあげます。
出現する症状はちがいますし、何年もたたなければ引きおこされないような症状もあります。しかし、私たちが知っておかねばならない大切なことは、「PTSDは治療ができる」ということです。心に傷を残した、鮮烈な出来事の記憶にとりくむ気持ちがあれば、回復につながります。これはとてもいいニュースです。
では、悪いニュースは何かというと、それは、もし、「自分の心に傷はない」というふりをしたり、トラウマによる不安を理由に行動を正当化しつづけていると、回復がむずかしくなるということです。

この本の中の事例はかなり過酷なものもありますが、回復への道筋は原因によらず共通しています。
母親の立場でこの本を読むと、普通の(?)モラ家庭の我が子への接し方で、ヒントがありました。
子どもの虐待被害者は、サポートが得られれば、大人より早く回復するものです。理想的に言えば、親がサポートすればいいのですが、親が虐待をしている場合は無理です。
そうした場合、周囲でその子を心配し、愛する人が、子どもの話を信頼することが重要です。もし、虐待をしていないほうの親が、子どもの話を信じず、虐待した犯人がまだ近くにいる場合は、子どもの危険は続いています。すぐに、安全を確保するために、子どもを保護するか、犯人を家から移動させる必要があります。このことは、両親が離婚しなければならない、という意味ではありません。虐待をした親は、治療やカウンセリングをきちんと受けなければなりません。「もうしない」という口約束だけをあてにしては、子どものトラウマをより大きくすることになります。
子供向けの本なので、わかりやすさ・読みやすさは言わずもがなです。PTSDを抱えているかもと思う当事者の方や、周りでサポートする方におすすめします。
「10代のセルフケア」シリーズ
この本は全10冊の「10代のセルフケア」シリーズのうちの1冊です。
表紙 | 本 |
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まとめ
「パートI PTSDを引きおこす原因とその症状」と「パートII PTSDの対処の仕方と治療」の2部構成。家族や周囲の人ができるサポートについても言及。
★★★★★ (虐待しないほうの親が子供をケアするための情報があった)
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