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「機能不全家族」について分かりやすい解説あり。子供の視点からの情報が得られる。
レビュー
これは「どこかへん」な家族、つまり機能不全家庭で育つ10代の若者向けに書かれた本です。
まず機能不全家族について、分かりやすい解説があります。
機能不全家族とは?
機能不全家族とは、家族のそれぞれが必要としていることに、応えられない家族のことです。
基本的に必要なのは、「生存(生きること)、安全と安心、愛情と帰属感(家族の一員であるという落ち着いた気持ち)、自尊心、成長、自立して生活するためのスキル(技術)を身につけること」です。これらは心理学者のアブラハム・マズローがあげた大切なポイントです。
太字は原文に従っています。この太字になった、マズローがあげた大切なポイントそれぞれについて、詳しい説明が続きます。
取り上げている、機能不全家族のタイプは以下。
- 情緒的な虐待をする親
- 育児・養育を放棄する親(ネグレクト)
- 過保護な親
- 性的な虐待をする親
- 完全主義の親
- 薬物依存症の親
- 宗教や政治にのめりこむ親
- 仕事にのめりこむ親(ワーカホリック)
- 精神的な疾患のある親
- 身体的な虐待をするきょうだい
- 障害のある子にかかりきりの親
- ギャンブルにのめり込む親(強迫的ギャンブル)
また、その後の「多様な家族構成」という章の中で、親の死や離婚、ステップファミリーもカバーしています。
子供向けということで、色んな意味で非常に読みやすかったです。難しい漢字にはルビが振られていますし、生々しい表現は抑制されていますし、親を糾弾するようなことは一切書かれていません。それでいてモラ家庭の母親(私)にも、さまざまな気づきを与えてくれた1冊です。
そもそも「うちって変だよね?」「モラ夫って親としてもおかしいよね?」と、大人の私が確信を持てない時期もありました。その後も「離婚したほうが子供のためなのか?」などと、子供がらみの疑問は尽きませんでした。
この本には親に向けた記述はありませんが、子供の置かれている状況や立場が子供目線で描かれています。そのため、本の中の状況と、我が子を取り巻く状況とを照らし合わせることで、一定のヒントが得られました。
モラ家庭・DV家庭で、養育中のお子様がいる方に、一読をお勧めいたします。
「10代のセルフケア」シリーズ
この本は全10冊の「10代のセルフケア」シリーズのうちの1冊です。
表紙 | 本 |
---|---|
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![]() | もしかして妊娠――そこからの選択肢 [Amazon |
![]() | わたしの家族はどこかへん?――機能不全家族で育つ・暮らす [Amazon |
![]() | 傷つけられていませんか?――虐待的な関係を見直す [Amazon |
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![]() | がまんしないで、性的な不快感――セクハラと性別による差別 [Amazon |
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この記事を見てくださった10代の方へ
10代で自分の家族が「どこかへん」と思えるなんて、自分の軸がある上に、すばらしい観察力だと思います。毒親本『不幸にする親』でも、次のように述べています。
子供は、たとえ親から不健康なコントロールをされていても、「うちは何かがおかしい。何か変だ」と認識することはほとんどできないものなのです。そう感じることができないように、幼い頃から親によってコントロールされているからです。そのため、本当は圧迫感を感じたり、感情が麻痺しているのに、そのことをわずかにしか認識できない子供も多いものです。
『不幸にする親――人生を奪われる子供』
もし誰かに相談することを躊躇しているとしたら、本は助けになりますか? 自分で本を読むことのほかに、相談する相手にも同じ本を読んでもらえば、説明しがたいことも伝わります。あるいはカウンセラーなど専門家であれば、すでに一通りの有名どころの本を読んでいるかもしれません。
まとめ
10代の子供向けの本。機能不全家族について分かりやすく解説。さらに機能不全家族のさまざまなタイプ別に、具体的なエピソードを通じて、10代の子供が取り得る対応を提案している。
★★★★★ (子供視点の情報が得られた)
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