本『となりの脅迫者――家族・恋人・友人・上司の言いなりをやめる方法』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★

毒になる親』の著者スーザン・フォワード氏が、モラ夫・モラ妻・毒親への対処法を「行動」と「心理」の2つ側面から伝授。原著は『世界の心理学50の名著』に選出。

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レビュー

私

 モラ夫って、自分の考えや主張を通そうとするとき「○○しないと、○○するぞ!」のようにネガティブな言い方をしますよね。私が言いなりにならないときの、うちのモラ夫の定番は、子供の前でも「離婚するぞ! 出て行け!」でした。

 離婚は子供のためにならない。子供の前で離婚について議論すべきではない。この2つの考えから、私は離婚を持ち出されると口を閉じていました。そして勝ち誇るモラ夫……。

 上のような事象を、この本では見事に言い表しています(太字は私が強調)。

私は長年にわたって、そうした闘いと、そこから生まれる「行動の悪循環」を理解する方法を探してきた。その過程で気づいたのが(略)まぎれもなく「恐喝(きょうかつ)」―「大切な人からの心理的恐喝(エモーショナル・ブラックメール)」だ、ということだった。

エモーショナル・ブラックメールとは、身近な人物が、直接的・間接的に、自分の思いどおりにさせてくれなければあなたを罰すると脅すことで、私たちの心をあやつろうとするときに使う、強力な手段のことである。(略)その意味するところは次の一点に絞られている。私の言うとおりにしなければ、きみは苦しむことになるだろう

本の内容

 この本は、いわば前半が「理解」編、後半が「対処」編の二部構成です。前半では脅迫者(つまりモラ夫・モラ妻)がどのような手を使うのか、なぜ恐喝するのか、あるいは脅迫の被害者(つまり我々)がなぜ考える力を曇らせてしまうのか、などの解説があります。この解説は説明しづらいことを、見事に言語化していると感じました。

 後半では、被害者が思考・行動して恐喝に対処することに主眼が置かれています。自分の考えや反応を変えるレッスンや、脅迫者に自分の言い分を伝える戦術の解説があります(※ 脅迫者に言い分を伝えることを、誰にでも勧めているわけではない)。声に出して唱えるエクササイズなどもあり、好みが分かれることは否めません。

 モラハラの被害に気づいたら別居・離婚しかない、という論調がありますが、この本はそのような立場ではありません。離婚の道を行く場合は納得ずくで進めるようになりますし、別の道を選んでもモラハラ被害を軽減できるようになります。本で取り上げられている実例でも、関係を改善するパターンと、疎遠にするパターンがあります。

 なお、モラ夫・モラ妻対策で読み進める前に、お伝えしたいことが1つあります。「第6章 責任はあなたにも」の最後に「この章をけっして自分を責めさいなむ方法として利用しないこと」という注意書きがあります。

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この本が役立つ方

 この本は、今まさに誰かの言いなりになっていると感じる方、モラハラに悩む方すべてにとって直接的な助けになります。夫婦間・親子間のモラハラのみならず、恋人同士(デートDV)・上司と部下(パワハラ)・友人同士など、さまざまの関係のサンプルが本に登場します。子供から親へ、部下から上司へ、サレ妻からシタ夫へ、シタ夫からサレ妻への圧迫の例もあります。加害者=男性、被害者=女性という概念に固定されていないので、モラ妻・メンヘラ妻に悩む男性の方も読みやすいと思います。

 そして、もうひとつ役に立つシチュエーションがあります。他人に説明をするときです。モラハラは人に分かってもらいにくい、説明しづらいと言われますが、この本には思わず膝を打つ表現が随所に散りばめられています。

 離婚調停で調停委員にモラ夫・モラ妻の悪行を理解してもらいたいとき。相談員やカウンセラーに助言を求めるとき。身内や友人に状況を説明するとき。読んでほしいページをコピーして渡すなり、本1冊を差し入れるなりして、代弁者として活用できます。

 ぜひご一読ください

残念な点

 ここまで絶賛してきましたが、惜しむらくは、重要な用語に当てられたビミョーな訳語です。文中に「ブラックメール」「送信者」「受信者」という用語が頻出しますが……。

 毎日新聞の記事によると「恐喝を英語でブラックメール(blackmail)という。(略)もともとこのメールは手紙ではなく古い英語やスコットランド語で地代や貢納金を意味する言葉だった」とあります。

 日本語で「恐喝を送信する」とは言わないですよね。原文でも「送信者」はsenderではなくblackmailerです。訳書のタイトルには「脅迫者」とありますが、文中にこの表記は登場しません。フォワード氏がemotional blackmail(心理的恐喝)と言うと「クライアントはほぼ例外なく納得してくれた」そうですが、日本語では「ブラックメール」よりも「恐喝」のほうが納得感が上だと思います。

 この本の著者は「毒親」の語源となった本『毒になる親』を著したスーザン・フォワード氏。この絶妙なネーミングからも、著者の素晴らしい分析力と表現力がうかがえます。返す返すも「ブラックメール」という訳語は残念すぎる……。

 原著『Emotional Blackmail: When the People in Your Life Use Fear, Obligation, and Guilt to Manipulate You』は広く読まれており、『世界の心理学50の名著』にも選ばれています。一方、訳書は『毒になる親』と比べて、実力以上に人気がないように思われてなりません。ご参考までに、amazon.comでの原作のレビュー件数と、amazon.co.jpでの訳書のレビュー件数を挙げます(2020年6月現在)。『Emotional Blackmail』の訳書は『ブラックメール』と、その新装丁版の『となりの脅迫者』の2版があります。

本のタイトルレビューの件数
Emotional Blackmail: When the People in Your Life Use Fear, Obligation, and Guilt to Manipulate You499件
amazon.com
Toxic Parents: Overcoming Their Hurtful Legacy and Reclaiming Your Life1148件
amazon.com
となりの脅迫者――家族・恋人・友人・上司の言いなりをやめる方法  [Amazon] [楽天] [レビュー]20件
amazon.co.jp
ブラックメール――他人に心をあやつられない方法  [Amazon] [レビュー]5件
amazon.co.jp
毒になる親――一生苦しむ子供  [Amazon] [楽天] [レビュー]454件
amazon.co.jp
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まとめ

要約

前半が「理解」編、後半が「対処」編の二部構成。前半は脅迫のメカニズムの分析など。後半は、被害者が心理面および行動面から恐喝に対処する術を学ぶ。

評価(お役立ち度)

★★★★★ (『「攻撃」がなくなる本』と同じくらい役立った)

基本情報
  • タイトル:となりの脅迫者――家族・恋人・友人・上司の言いなりをやめる方法  [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • 著者:スーザン・フォワード(セラピスト)
  • 訳者:亀井 よし子
  • 出版社:パンローリング
  • 発行日:2012年6月15日
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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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