★★★★★
鴻上尚史氏の著書。
重すぎる「親の期待」について、その原理や対処法が分かる。めちゃめちゃ理解しやすい!
レビュー
本のあらすじ・位置づけ
この本は作家&演出家の鴻上尚史氏が著しました。不健全な親子関係について分かりやすく解説し、当事者が打てる手や心の持ち様を紹介しています。
扱っているのは、「親の期待」を押しつけて、一見分かりにくいけれど、子供を心理的に悩ませたり苦しめたりしているような親です。誰がどう見ても毒々しい親、ではありません。
まずは “第1章 親という「同調圧力」” や “第2章「他者」への成長” で読者に気付きを与えます。たとえ自分を取り巻く状況が変わらずとも、モノの見方が変わります。あるいは世界が変わって見えるかも。
続いて “第3章 自分で考える習慣” にて、手始めに自分が取り組めることを挙げています。中高生の子供でも、決心すればできることです。
さらに “第4章 自分の人生を否定する親” では、子供が親に対して働きかける方法を紹介。あるいは、親が読めば、自分がどうしたらいいかが分かります。
最後に “第5章「世間」と「社会」” で、この2つを対比します。世間と社会については、鴻上さんは色々な著書で考察を披露。この本では章立てして扱っており、説明のコンパクトさと充実具合が両立しています。
なお本の趣旨について、次のように述べています。
もし、あなたが「親の期待」に押しつぶされそうになっていたり、「親の期待」を優先して本当にやりたいことを我慢しているとしたら、この本を読んで、「親の期待」から自由になってほしいと思います。
対象読者は以下のとおり。
「親の期待」に苦しめられている中高生だけではなく、「親の期待」をつい押しつけてしまうことに苦しんでいる親にも、そこから自由になる本になればいいと思って書きました。
子供は親にネガティブな気持ちがあったとしても、なんで親の期待に応えようとするんでしょうね。鴻上さんは、その理由に触れています。
どうして「親の期待」に応えようとしてしまうのでしょうか。
いくつか考えられる代表的な理由を挙げてみましょうか。1「親を喜ばせたい。がっかりさせたくないから」
2「親が一番自分のことを分かってくれていると思うから。親は自分のためを思ってくれているのが基本だと思うから」
3「特に自分に目標があるわけではないから。他に選択肢がないから」
4「自分たちのようになってほしくないと言われるから。お金に困るような人生を送ってほしくないと言われるから」
5「期待に応えないと罪悪感を覚えるから」……などでしょうか。
この後「ひとつひとつ、どう向き合い、どう解決していけばいいか、これから書きますね」と続きます。
上の理由に心当たりがある方に、ご一読をお勧めいたします。中高生以外の、成人後に「親の期待」に悩んでいる方にも、読みやすいです。同様の方が、この本のエピソード中に登場します。それに、なにせ中高生向けなので、色々とかみ砕いて書いてあります。
感想等
分かりやすかった!――感想はこれに尽きます。演出家としてのキャリアのためか、鴻上さんの解説は、頭の中で状況を描きやすいように思います。たとえば不健全な親子関係を、友達同士や「推しとファン」の関係になぞらえて解説。他人にはするのは変だと感じることが、身内なら許容されているところに、たやすくヤバさを感じられました。
私のことを申し上げると、小学生の娘に中学受験をネタに教育虐待を行う夫がいました(離婚済み)。その経験上、教育虐待とは子供への期待の押しつけだと思います。別居前にこの本(2021年4月発行)があったら、きっと元夫に勧めていました。あるいは、別居しないまま娘が苦しみ続けていたら、この本を娘に渡していました。機能不全家族の誰にとっても、気付きがあります。
それと、私は虐待しない普通の親だと思います。そういう親にとっても、子育てに関して示唆が得られました。
よろしかったら、ぜひ内容をご確認ください。
まとめ
不健全な親子関係について解説し、当事者が打てる手や心の持ち様を紹介。
★★★★★ (めちゃめちゃ理解しやすい!)
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