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機能不全家族で育った東大卒の女性医師が、自身の半生を綴る。
子供の心がどのように蝕まれていき、大人になった後にどのような影響があるのかが手に取るように分かる。
レビュー
ネタバレはありません。
この本は機能不全家族で育った東大卒の女性医師が、ご自身の半生を綴ったものです。ネット風の言い方をすると、著者の家庭環境は毒母・毒父のコンボでした。
ストーリーは誕生時から始まって、東大を卒業して医師となったずっと後の、この本の執筆時まで続きます。もちろん最初は母親から聞いた話が元になっていますが、4~5歳辺りからはご自分の記憶にあるエピソードが語られます。
この本を書いた目的について、著者は「あとがき」で次のように述べています(太字は私が強調)。
私がこの本を書いた目的は、世の中の全ての親御さん達に、「言葉の暴力を主体とする精神的暴力」を自分のお子さんに振るわないで欲しいと訴えるためである。

私は母親としてこの本を手にしました。「子供に対する夫の言動が狂っている」と思っていたためです。残念ながら夫に読ませることは叶いませんでした。
しかし離婚という形で、我が子への精神的暴力を断ち切ることには成功しています。この本が鳴らした警鐘は、私に届きました。著者に感謝します。
「親のどんな言葉・態度・表情・働きかけが、子どもの精神をどう病ませていくかを知っていただき、それを避けていただくため」として、この本には数多くの詳細なエピソードが登場します。しかも単なる体験談に留まらず、医師としての分析や洞察が加わっています。
我が子はモラ夫の行為についてどう思っているのか。モラ夫の元で子供が成長したらどうなるのか。そうしたことを知りたかった私には、ドンピシャの内容でした。
なお、この本は前著『親という名の暴力』の、いわばダイジェスト版です。著者自身が大幅に整理・要約し、わかりやすくまとめなおしました。といっても、内容だけでなく文章の形式的にも十分に重々しい本です。
しかしその『親という名の暴力』も、元々は原稿用紙7000ページ分あった初稿から、約1000ページに削りに削ったもの。吐き出した量の多さに、魂の叫びを感じました。
最後に著者と弟さんの幸せを祈らずにはいられません。
まとめ
機能不全家族で育った東大卒の女性医師が、自身の半生を綴る。単なる体験談に留まらず、医師としての心理分析や洞察が加わる。
★★★★★ (子供の心がどのように蝕まれていき、大人になった後にどのような影響があるのかが手に取るように分かる)
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