
「虐待」っていう言葉、キツくない?
うちのモラ夫に「虐待するな! くそ毒父!」って言ったら、「虐待なんかじゃない!」って。

もっと広範に大人から子供への不適切な行為を指す「マルトリートメント」という用語を紹介するね。
マルトリートメントとは?
「マルトリートメント」という言葉を聞いたことはありますか? 『子どもの脳を傷つける親たち』(レビュー)という本から、解説している部分を引用します。
虐待という言葉がもつ響きは強烈で、ときにその本質を見失うおそれがあるため、わたしたちの研究では、強者である大人から、弱者である子どもへの不適切なかかわり方を、「虐待」と呼ばずに「マルトリートメント(maltreatment)」と呼んでいます。
これは虐待とほぼ同義ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称です。子どもに対する大人の不適切なかかわり全般を意味する、より広範な概念と考えればよいでしょう。
言葉の成り立ちは、mal(悪い)とtreatment(扱い)の組み合わせです。よく「不適切な関わり」「不適切な養育」といった添え書きがなされています。略して「マルトリ」というパターンも。
「虐待」って、強い言葉ですよね。訓読みすると「虐げる」。加害者に「虐げる」つもりがあったかどうかが、虐待に当たるのかに関係するのでしょうか?
『子どもの脳を傷つける親たち』の著者は、別の本『脳を傷つけない子育て――マンガですっきりわかる』(レビュー)にて親側の意図ではなく、子供のこころの状態が問われるとしています。
虐待は自分には関係ない。そう思っている人が多いと思います。ですが、たとえば、大きな声で叱ったり、しつけの一環として手加減をしてたたいたりすることはありませんか? このとき、親としては加害の意図はないでしょう。(略)注目すべきは親の意図ではなく、子どものこころの状態です。
マルトリートメントの具体例をこの本から抜粋します。「バカ」「あなたを産んだせいで苦労している」など人格を否定するようなことを言う、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう、しつけのためにたたく(手加減をしていても)、体調を崩しても病院に連れていかない、子どもが嫌がるのにお風呂に一緒に入る、など。
ここで挙げた本の著者は小児精神科医の友田 明美氏。著作の中で全編を通じて「マルトリートメント」という言葉を用いています。
ただ、この単語「マルトリートメント」に少々触れている本なら他にもあります。『ルポ 教育虐待』(レビュー)から、武蔵大学の武田信子教授の言葉を引用します。
「日本では法律上、『虐待』は『保護者』による行為と定義づけられていますが、私はカナダのトロント大学で子どもの育ちや子育て支援の研究をしていたこともあり、英語圏で『虐待』といえば、『abuse=力の濫用』だけでなく『mal-treatment=不適切な扱い』という意味も含んでいることを知っていました。(略)」
ちなみに米国では1980年代から使われていた言葉です。
誤解・誤認を生む「(児童)虐待」という用語に代わって、「名は体を表す」単語が世間一般に認知されると、救われる子供も増えるんじゃないかと思います。たとえば「モラハラ」「毒親」といった新たな用語のおかげで、一般的な認知が広がり、被害に気付く人が増えました。
「マルトリートメント」「マルトリ」がそうなるのか分かりませんが、その候補ではあるでしょう。がんばれ、マルトリ!
まとめ
マルトリートメントとは、「虐待とほぼ同義ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称」です(『子どもの脳を傷つける親たち』より)
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