
気持ちとしては、くっそモラハラ夫とすぐにでも離婚したい!
けれど、経済力の問題で簡単に離婚できないんだ……。

そういう八方塞がりの状況のときに、どうすればいいかを説く本がある。
DV夫・モラハラ夫でも別れられないとき
巷には「DV夫やモラハラ夫からは逃げるしかない」という言説があふれてます。精神面だけを考えれば有効な一手ですが、ことはそう単純ではありません。DV・モラハラという苦境から逃れられても、別のタイプの苦境、極貧生活に陥ることが予期されたら、別居・離婚に踏み出すことには及び腰に……。
それを裏付ける統計データもあります。DV夫・モラハラ夫と別れたいと思いつつ、別れなかった女性の約半数は、経済面を理由のひとつに挙げています(詳しくは「調査データ」というセクションで後述)。
では、DV夫・モラハラ夫と暮らし続ける身体的・精神的につらい道と、別居して経済的苦境に陥る道の2つしかなかったら、どうしたらいいでしょうか。そんな打つ手がなさそうな、ただただ理不尽な状況を受け入れるしかなさそうな場合でも、どうしたらいいかを説く本はあるんですね。
そうした本で挙げている対処法は次の2つです。
- 自分の気持ちや考えを具体的にはっきりと認識する。なんとなく、ではなく。自分は今、イヤな気持ちでいるのか? 何がイヤなのか? なぜ別れられないのか? 惰性でDV夫・モラハラ夫と暮らし続けるのではなく、同居を選び取る
- 長期戦で経済的に自立できる道を探る
本から関連の記述をピックアップします。
この連載で以前も書きましたが、ある感情に振り回されている時、「自分はどうしてそう感じているんだろう?」と考えることは、一時的にであれ、その感情から自由になる方法です。少しでも自由になれば、自分にとって何が一番いい方法なんだろうと考える余裕が生まれるのです。
『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』
(略)
考えましょう。とにかく、考えて、自分の気持ちと向き合いましょう。そうするしか、心を整理する方法はないのです。
「忘れよう」とか「許せない」というのは、考えてないですよ。それは「悩んでいる」んです。僕が何度も書くように「考えること」と「悩むこと」を区別するのです。「悩む」とそれだけで何時間も過ぎます。でも、何も「するべきこと」が浮かびません。頭も整理されていません。
「考える」と、とりあえず「やるべきこと」とか「仮の結論」が浮かびます。やってみて、間違っていたとしても、それは意味のある時間なのです。ひとつの仮説を潰して、次の仮説にたどり着けるのですから。
そんな時は、加害者と離れられない理由を、自分の中で明確にします。(略)
『カウンセラーが語るモラルハラスメント』
相手と離れられない理由は何でしょう。経済的なこと、子どもの問題、簡単に離婚してはいけないという考え等々、思い浮かんだことを箇条書きにし、一つひとつを再検討します。
モラハラパーソナリティと共生する場合は、何を得るために相手と手をつないでいるのかを知っていなければなりません。
『カウンセラーが語るモラルハラスメント』
もし、真剣に考えて「離婚したい。問題は経済力」と結論したら、長期にわたって「経済問題」を解決する方法を見つけていきましょう。
『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』
子育てとの両立は大変ですが「資格を取って自立できる経済力を目指す」とか「副収入の道を探す」「こつこつと貯蓄する」なんてことでしょうか。
おすすめの2冊
経済面から離婚に踏み切れないときに、考え方を提案する本を2作紹介します。上で引用した本です。
1冊目は『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』(レビュー)では、夫に浮気をされた女性に対し、著者の鴻上氏が神回答を繰り出しています。女性は「幼児を抱えて離婚して、何のいいことがあるでしょう。私に生活力があるわけでもないので、貧困のシングルマザーに陥るだけで、夫が第二の人生を謳歌したらと思ったら、絶対そんなの許せないと思いました」と相談を寄せています。前掲の引用は、これに対する回答の中から抜粋しました。
鴻上氏はこの悩める女性に対し、さまざまな質問を投げかけています。これが同様の悩みを持つ方が考える際のネタになります。
なお、この本はシリーズ2作目の『~もっとほがらか人生相談』です。シリーズ1冊目の『~ほがらか人生相談』(レビュー)ではありませんので、ご購入の際にはご注意を。
2冊目は『カウンセラーが語るモラルハラスメント』(レビュー)です。モラハラを軸に、さまざまな場面で被害者が抱きがちな疑問に答えています。モラハラ本の中には「離婚一択」のような選択肢しか提示していないものもありますが、この本は複雑な事情に配慮しています。
私の、モラハラ本のバイブルです。
よろしかったらご一読ください。
調査データ
平成30年(2018年)3月公開の『男女間における暴力に関する調査報告書』(内閣府男女共同参画局)から引用します。なお、この調査書のレビュー記事も公開しています。
次に挙げるグラフは、配偶者から何らかの暴力(身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要)を受けた人に、相手と別れたか否かを尋ねた結果です。大半の人が現状維持で、相手と別れた人は少数派。女性では12.6%、男性では7.2%に過ぎません。

上の質問で「別れたい(別れよう)と思ったが、別れなかった」人に、その理由を尋ねた結果は次のとおり。
これは女性の回答結果ですが、半数近い48.9%の人が「経済的な不安があった」と答えています。そして、別れなかった理由の2番目になっています。
ちなみに男性で「経済的な不安があった」を選択した人は16.7%で、5番目に多い理由になっています。

まとめ
- 経済的な不安から、配偶者と別れたくても別れられない人はたくさんいる
- そのような場合には、別れられない理由や自分の気持ちを真摯に考える
- 長期的な視点で、経済的な自立を検討する
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