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鴻上尚史氏が、雑誌の読者から寄せられた人生相談(28件)に答える。実践可能な具体策を鮮やかに提示する。
レビュー
作家で演劇の演出家の鴻上 尚史氏が、一筋縄ではいかない人生の問題に鮮やかに回答しています。オリジナルは月刊誌「一冊の本」上の連載で、Webメディア「AERA dot.」に転載したのち、書籍化されました。
タイトルには「ほがらか」とありますが、読者が寄せる質問はなかなかヘビーです(著者はインタビューで、連載開始前はもっとのんきな質問が来ると思っていたと、語っている)。1件1件の質問も回答もがっつり長文で、質問者の置かれた状況が分かりやすい上、著者の回答も具体的で実践可能なものになっています。次の一手が分かるのがイイ! 本の帯には「神回答!」とありますが、私も回答を読むたびに「お見事!」と思っています。
広範な内容の相談を取り上げていますが、本サイトの守備範囲と重なるものもあります。たとえば「恵まれない環境で育った母をかわいそうと思う気持ちと恨む気持ちが混在」している女子大学生や、「跡継ぎの兄が一番の扱い」で「あまりに差別されて育った」女性が登場します。
本の副題に含まれる「世間」という単語は、重要なキーワードです。この本では「世間」と「社会」を対比していますが、鴻上氏は複数の著書で様々な角度から「世間」について語っています。「世間」に関しては、おそらく日本で一番熱量をかけて洞察されて、市井の人々に解説しています。DVや離婚がからむと、とかく世間体が気になるものですが、この本を読むと世間・世間体について再考することを請け合います。
心理士や精神科医などの専門家ではなく、エンタメ業界の方がなぜ複雑な人生の問題に次々と神回答を繰り出せるのか不思議でしたが、「あとがきにかえて」にその答えがありました。ご自身で旗揚げした劇団から始まって「僕は約40年間、ずっと、人生相談に答えてきた」経験と、以下の方針に裏打ちされているのだと解釈しました。
回答は、いつも、「できるかどうか」を基準にしました。理想だけを語っても、どんなに勇気づけても、できないことはできないものです。
人生の問題に対する向き合い方が学べます。ぜひご一読ください。
以下の記事では『ほがらか人生相談』に寄せられた相談内容を分類して掲載しています。お役に立ちそうな相談がないか、ぜひご確認ください。
鴻上 尚史氏の本
続編として『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発行されています。こちらも幅広い年齢の相談者が寄せる、雑多な分野の人生の問題に優しく、そして具体的に回答。「ほがらか」なのはやっぱりタイトルだけですが。
詳細については、リンクからレビューをご覧ください。
表紙 | タイトル |
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まとめ
鴻上尚史氏が、雑誌の読者から寄せられた人生相談(28件)に答える。実践可能な具体策を鮮やかに提示する。
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