★★★★★ イチオシ!
- 被害者の回復を最重視している(モラ夫を掘り下げることを第一の目的にしていない)
- モラ家庭で子供が受ける影響を詳細に取り上げている
レビュー
この本はモラハラの被害にあった女性を支援してきたカウンセラーが著しました。著者は被害者にとって一番大切なことについて、次のように述べています(太字は私が強調)。
自分の価値観や尊厳、生き方を、モラハラという攻撃によってそぎ落とされてきた被害者が、まず、するべきなのは、自分自身がどうしたいのか、この先、自分はどんな人生を築いていきたいかを、自分の意思で見いだすことです。
このことを言葉を変え、表現を変え、本の中で繰り返し説いています。本を読んだところで即効性のあるモラ夫への対抗手段が得られるわけではありません。ステップバイステップの手続きが載っているわけでもありません。しかし、対処療法ではなく抜本的な解決、つまり被害者の回復につながります。被害者によって価値観や環境が異なるため、解決策は人によって異なります。本を読みながら、あるいは本を読んだ後に、自分で考える必要があります。
この方針をベースに、被害者が自分を取り戻すことを目的に加害者・被害者の心理などモラハラ基礎知識も掲載(モラハラについて深掘りするためではないことに注意)。こうした解説も非常に分かりやすかったです。
目次は次のとおり。
- はじめに
- 1.モラルハラスメントを知る
- 2.モラハラストーリー
- 3.モラハラパーソナリティの特性
- 4.被害者としての自分を知る
- 5.モラハラの連鎖
- 6.モラハラに気づいて
- 7.モラハラから遠ざかる
- 8.子どもや周囲とのかかわり方
- 9.傷ついた心の再生に向けて
- おわりに
子供について
私が読んだ本の中でも、モラ家庭で育つ子供が受ける影響について、分かりやすく詳細に書かれていました。DV・虐待が世代間(親子間)で連鎖することは見聞きしたことがあると思いますが、この本では被害者が子供などの弱者にモラハラの矛先を連鎖させてしまうことが真っ先に取り上げられています。
パートナーから攻撃を受け続け、被害者として心が蝕まれ、その心の膿を吐き出すために、自分が受けてきた攻撃(モラハラ)と同様の行為を、子ども、仕事の部下、後輩などといった選び出したターゲットにしてしまう。特に、反抗期や思春期といった年相応の、モラハラに似た行動を当たり前にする時期の子どもに対しては、被害を受けてきた親の感情がむき出しになります。
この指摘はショッキングでしたが、次に続く段落でちょっと救われた気持ちになりました。
しかし、多くの被害者たちは自分の行動に気づき、愕然とします。どうしてもモラハラパーソナリティと別れられなかった被害者が、別れる決断をするのは、そのことに気づいた時、というケースが非常に多く見られます。
この本では、子供への影響について、他にもさまざまなケースを取り上げています。
私は自分の希望する未来がどんなものかが分からず、別の書籍(『完訳 7つの習慣――人格主義の回復』『幸せをつかむ「4つの地図」の歩き方』など)の助けも借りて、考えに考えました。この本から自己肯定感、自尊心、自信の大切さを学びました。
この本はモラハラ本の中で私の一押しです。よろしかったらお手に取ってください。
まとめ
モラハラ・加害者・被害者・子供へ影響の解説から、対処法まで網羅的に取り上げている。対処法として、離婚に限らずモラハラから少しでも遠ざかることや、自分に向き合うことを挙げて、被害者の回復という根本解決を目指す。
★★★★★ (私がいちばんお世話になったモラハラ本)
- タイトル:カウンセラーが語るモラルハラスメント――人生を自分の手に取りもどすためにできること
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- 著者:谷本 惠美(心理カウンセラー)
カウンセリングルームおーぷんざはーと - 出版社:晶文社
- 発行日:2012年8月1日
- ISBN-10:4794967829
- ISBN-13:978-4794967824
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