★★★☆☆
二部構成で、前半は「心理サポート編」としてモラハラに関する解説、後半は「法的サポート編」として別居・離婚の手続きや心構えを扱う。
加害者が夫の、家庭モラハラのケースを扱う。
レビュー
臨床心理士、弁護士、元モラハラ被害者と立場の違うお三方の共著です。二部に分かれて構成されており、前半は「心理サポート編」としてモラハラに関する解説、後半は「法的サポート編」として別居・離婚の手続きや心構えを扱っています。
取り上げているのは家庭でのモラハラ、しかもモラ夫から妻に攻撃するものだけに限定しています。この範囲内で、本のタイトルにあるとおり「すべて」に一通り言及しています。「心理サポート編」ではモラハラ、加害者、被害者についての説明、対処法、子供への影響など。「法的サポート編」では相談先、別居準備や離婚手続きの方法、親権・監護権・慰謝料・養育費・面会交流の説明、心構えなどです。
出版当時(2013年)は今よりもモラハラに関する情報が少なく、この本に救われた人はたくさんいると思います。高橋ジョージさんとの離婚裁判にて、三船美佳さんが裁判所に資料として提出した2冊のモラハラ本のうちの1冊でもあります(2015年の離婚裁判)。ちなみに、もう1冊は『カウンセラーが語るモラルハラスメント――人生を自分の手に取りもどすためにできること』(レビュー)です。
ただ、私はこの本をちょっと苦手に感じてしまいました。被害者にも加害者にも第三者にも、それと分かりにくいモラハラ。このモラハラについて書かれた本を読むと、たいてい「そうそう!」と、同じ文明の人にやっと出合えたような嬉しさが湧いてきます。しかし別居前にモラハラの渦中で初めてこの本を読んだときは、「そうそう!」と思うよりも「ピンとこない……」箇所が気になりました。
今回レビューを書くにあたって、なぜなのかを考えてみました。どのモラ夫でもモラハラ攻撃のやり口は似通っていますが、被害者がどう感じるかや、どのように対処するかは、人によって違うと思うんです。この本の内容と同じ人もたくさんいるかもしれませんが、私の実感や実体験とはいろいろな点で異なっていました。ひとつだけ例を挙げます。
この本を読んで、夫がじつはモラ夫だとわかった、モラ夫が変わる見込みも薄いことがわかった、でもすぐに離婚という気持ちにはならない、という方もいることでしょう。離婚するかしないかは、別居して、気持ちの整理をつけてからじっくり考えてもよいと思います。(略)
同居→別居→離婚と事を進めるときに、同居と別居の間の壁を、別居と離婚の間の壁よりも薄く見積もっていることに驚きました。

私としては、別居と離婚の間には法律上の手続きの壁があるだけで心理的な壁はないと思っていました。つまり離婚を心に決めてから、その最初の一歩として別居を敢行するものだと。
そうは明記されていませんが、別居や離婚を急かされているように当時は感じられました。モラ家庭を出た今となっては、私の場合にはモラハラを断ち切るには別居・離婚しかなかったと思えますが、なかなか別居(=離婚)を決断するのは難しかったです。
離婚本としては、モラハラに特化している点が他のものと違います。優しい論調で被害者の心理に配慮しながら書かれています。弁護士の探し方についての記述に、そうした配慮が感じられました。
モラハラ夫との別居・離婚に、心が傾いている方におすすめいたします。
まとめ
二部に分かれて構成されており、前半は「心理サポート編」としてモラハラに関する解説、後半は「法的サポート編」として別居・離婚の手続きや心構えを扱う。加害者が夫の、家庭モラハラのケースのみ。
★★★☆☆ (著者らのシナリオに実体験が沿わず、ちょっと苦手に感じた)
- タイトル:「モラル・ハラスメント」のすべて――夫の支配から逃れるための実践ガイド [Amazon
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- 著者:本田 りえ(臨床心理士)、露木 肇子(弁護士)、熊谷 早智子(元モラハラ被害者、モラルハラスメント被害者同盟の主宰者)
- 出版社:講談社
- 発売日: 2013年6月
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