
虐待とかモラハラとか色んな用語があるけれど、具体的な定義は?
とりあえず検索するときに困る。

本から引用しながら解説するね。
用語の説明
特定の相手に継続的・習慣的に暴力・暴言や、いやがらせ、無視などを繰り返す行為を指す用語として、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」「虐待」「ハラスメント」といったものがあります。いずれも、どのような言動をどれくらいの頻度でどの程度の期間行ったら当てはまるのか、明確な規定はありません。「いやがらせ」という意味のハラスメントのほうが虐待よりも軽微な印象を与えますが、人間の受け止め方の違いであって、深刻度に応じて境界が設けられているわけではありません。
「DV」「虐待」という用語は法律でも用いられています。配偶者間の暴力を扱った「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」は「DV防止法」と略されます。また、子供に対する暴力を扱った「児童虐待防止法」という法律もあります。この法的な言葉遣いに準じて、配偶者に対する暴力はDV、子供に対する暴力は虐待という用語が使われる頻度が高いです。
「家庭の」という意味のdomestic(ドメスティック)という用語が使われているDVは、行われる関係が家族間、その他の親しい関係のもの(事実婚のカップルなど)に限定されますが、虐待とハラスメントにはそのような観点はなく広範に使われます。
なお攻撃が行われる関係性・対象を明示した、夫婦間DV、親子間DV、児童虐待、老人虐待といった表現もあります。家族以外に行われる、動物虐待、パワハラ(上司から部下へ)、デートDV(恋人間)なども用語としては馴染みがあるでしょう。
さらにはDV、虐待、ハラスメントという単語が含まれなくても、同様の継続的で特定の相手に対する攻撃を意味する用語もあります。一例を挙げると、家庭内暴力(子供から親へ)、いじめなどです。
どんな種類があるか? 法律編
DVや虐待について、どのような種類があるか、法的な規定を述べます。法律の条文そのままだと分かりにくいので、本から引用します。夫婦間のものと、親子間のもので別々の法律で定義されています。
DV防止法では、「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力、またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と規定されています。
『カウンセラーが語るモラルハラスメント――人生を自分の手に取りもどすためにできること』
こうした暴力には、次のようなカテゴリーが含まれます。
①身体的暴力(小突く、殴る、蹴る、殴るふりをする、包丁を突きつける、ものを投げつける、髪を引っ張り引きずりまわすなど)
②精神的暴力(脅す、侮辱する、誹謗中傷する、無視するなど、自尊感情を傷つける)
③経済的暴力(生活費を入れない、あるいは制限する、経済的自由を奪うなど)
④社会的暴力(行動や交友の監視・制限、外で働くことを妨害するなど)
⑤性的暴力(性交渉の強要、暴力的性交渉、避妊に非協力、堕胎の強要、見たくないのにポルノビデオを見せるなど)
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児童虐待防止法第二条では、虐待を大きく四つに分けて定義しており、わかりやすく説明すると以下のようになります。
『子どもの脳を傷つける親たち』
①身体的虐待(physical abuse)
②性的虐待(sexual abuse)
③ネグレクト(neglect)
④心理的虐待(emotional abuse)
セクハラ(セクシャル・ハラスメント、性的ハラスメント)、モラハラ(モラル・ハラスメント、精神的ハラスメント)といった用語は、種類で細分化した呼び名です。
モラハラについては、別の記事で扱っています。
また、「虐待」という言葉は強烈な印象を受けます。子供への「虐待」に代わる「マルトリートメント」という用語を紹介する記事は以下。
実態は複雑
絡み合っている
法律上はDV・虐待の種類を「身体的」とか「精神的」とか区分していますが、実態としては相互に関係し合っています。以下は本からの引用です。太字は私が強調しました。
精神的虐待とそれ以外の虐待の違いは、身体的な被害があるかないかの違いだけであり、どのような種類の虐待においても、問題の本質は被害者の心が大きく傷つけられ、ゆがめられているところにあります。つまり精神的虐待は、すべての虐待の共通要素であるとともに根源であると言えます。
『不幸にする親――人生を奪われる子ども』(訳者あとがき)
次の引用は、図に添えられたものです。
身体的暴力と性的暴力が重なっているのは、性的な部分が身体の一部であるためです。そして全体を「精神的暴力」がおおっているのはどの種類の暴力であっても受けた側の精神に深い傷が残ることになるためです。
『傷ついたあなたへ――わたしがわたしを大切にするということ DVトラウマからの回復ワークブック』
他のタイプのDVや虐待も
『日本一醜い親への手紙――そんな親なら捨てちゃえば』(レビュー)の編集者は、法律上、児童虐待には4種類(心理的、身体的、性的、ネグレクト)しかないことに疑義を唱えています。そして、この本の中で「経済的虐待」および「文化的虐待」の例を提示。まずは経済的虐待について以下に引用します。
この四つしか児童虐待として認めず、高齢者虐待にだけ経済的虐待を認めています。現実の子どもは自分がためたお小遣いを勝手に使われたり、不当な理由でアルバイトを許されなかったり、魂の奥底から望んでいる進学先を不当な理由でねじ曲げられるなどの経済的虐待を、親から受けています。
文化的虐待は以下のとおり。
文化的虐待とは、親の教えと一般常識が著しくかけ離れているために、子どもがその間に宙吊りにされ、同世代の仲間から浮いてしまったり、いじめに遭うなどの孤立へ導く虐待のこと。僕が作った造語です。
親自身が精神病や発達障害などの困難を負っていても病院に行かなかったり、宗教に入れ上げて子どもに入信を迫ったり、過激な政治思想を日常的に吹き込んだり、ヤクザのような非合法の考えになじませたり、学歴・所得・職業・性・国籍などに偏見と差別意識を植え付けるなど、弱者である子どもに対して支配力をためらいなく発揮するところに、この虐待の恐ろしさがあります。
また最近「教育虐待」という用語を耳にしませんか? これは受験や習い事といった教育ネタを理由(言い訳)に、親が子供を追い詰めたり、子供に手を上げたりする虐待です。法律上の種類では、心理的虐待や心理的虐待を含みます。
なお、教育虐待については、別途、以下の記事で取り上げています。
まとめ
- 特定の相手に継続的・習慣的に暴力・暴言や、いやがらせ、無視などを繰り返す行為を指す用語として、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」「虐待」「ハラスメント」といったものがある
- 種類としては身体的、精神的、性的、経済的、社会的なもののほかネグレクトも
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