法務省資料『父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果』のレビュー

おすすめポイント

 離婚後の親権(共同親権/単独親権)・面会交流・養育費について、世界24か国の法制が分かる。

 信頼のおける法務省の資料

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はじめに

 離婚後の親権・面会交流・養育費など子供の養育について、海外の先進的な例を見聞きすることがあります。ただ発信者の立場に偏りがあるような印象をぬぐい切れませんでした。そんな中、(中立性が期待できる)法務省が、世界各国の実際の法制について調査した結果を見つけました。

離婚後の親権制度や子の養育の在り方について,外務省に依頼してG20を含む海外24か国の法制度や運用状況の基本的調査を行った。

 公表されたのは、世界中がコロナ禍に巻き込まれていた2020年4月のことです。親権・面会交流・養育費・子がいる場合の協議離婚の可否といった観点で、国ごとに調査結果をまとめています。以下からダウンロード可能です(pdf)。

 この記事では調査書のレビューと要約をお届けします。正確性を重視して要約していますが、確実な情報は原本を当たってください

レビュー

 海外24か国における、離婚後の親権(共同親権/単独親権)・面会交流・養育費・協議離婚などに関する調査結果です。日本語の情報として網羅性・正確性の面で他に比類なし!

 図表などグラフィカルな要素は一切なく、文章による解説のみで63ページあります。事実が淡々と述べられているだけですが、各国の文化や日本との違いが透けて見えてます。

 たとえば「親権」ではなく、「親責任」「親の関与」といった用語が用いられている国があります。私はこの用語から、親の権利というより、親の義務のような印象を受けました。

 また、日本では協議離婚(調停・裁判を行わずに、当事者の話し合いで決着させる離婚)が離婚件数の大半を占めますが、子供の有無にかかわらず認められていない国が多かったです。

私

 個人的には、この第三者が介在する制度はすばらしいと思いました。

 夫婦の話し合いで解決した協議離婚のほうが、裁判所を介した調停離婚や裁判離婚よりも円満――日本では、このような風潮がありますが、弱者が強者に押し切られて、不利な条件で離婚したケースも見聞きします。中立で冷静な第三者を挟んだほうが、夫婦平等で子の利益を考慮した離婚に近づくように思いました(特にモラ家庭の場合)。

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要約

 ここでは、日本以外のG7各国(アメリカ、カナダ、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス)と、文化的に近い中国・韓国の合計9か国を取り上げます。親権と協議離婚の2つの観点で表形式にまとめます。そもそも各国で「親権」「協議離婚」の意味するところが、日本でのものと厳密に一致しているわけではないので、正確な情報が必要な場合は原本の参照をお願いします。

親権

国/州「親権」に当たる用語離婚後の親権
アメリカ/
ニューヨーク州
監護
(custody)
単独・共同 ※注1
アメリカ/
ワシントンDC
監護
(custody)
規定なし ※注2
カナダ/
ケベック州
親権
(parental authority)
共同
カナダ/
ブリティッシュコロンビア州
親責任
(parental responsibilities)
単独・共同 ※注3
イタリア親責任共同・単独 ※注4
イギリス/
イングランド・ウェールズ
親責任
(parental responsibilities)
両親それぞれが単独で行使
ドイツ親の配慮共同・単独 ※注5
フランス親権共同・単独 ※注6
韓国親権共同・単独 ※注7
中国(記載なし)共同

注1(アメリカ/ニューヨーク州)

  • 法的監護と身上監護(子と共に居住する権利)がある
  • 全ての監護及び面会交流に関する裁判において、家庭内暴力の有無が考慮される
  • 法的監護については、両親が敵対関係にない場合のみ、両親が共同して行使する
  • 身上監護は、子と一緒に住んでいた期間が長い方の親が取得する傾向にある

注2(アメリカ/ワシントンDC)

  • 法的監護(Legal custody)と身体的監護(Physical custody)がある
  • 離婚後に共同行使するものについて、条文上限定は加えられていない

注3(カナダ/ブリティッシュコロンビア州)

  • 子と同居していた親は、離婚(別居)後も、子に対して監護権(guardianship)を有する

注4(イタリア)

  • (共同監護では)子の利益に反する場合にのみ単独監護

注5(ドイツ)

  • 単独親権(親の配慮)が認められるケース
    • 親の一方が同意しており、かつ14歳以上の子が反対していない場合
    • 子の福祉にかなうと期待される場合

注6(フランス)

  • 子の利益に必要な場合には、家事事件裁判官は離婚後の親権行使を両親の一方に委ねることができる

注7(韓国)

  • 裁判離婚においては単独親権の指定を原則とする
  • 協議離婚においては共同親権とする事例が相当数ある

協議離婚

国/州協議離婚の可否
アメリカ/
ニューヨーク州
不可(争いがない場合でも、裁判所の書類確認が必要)
アメリカ/
ワシントンDC
可能(争いがない場合、裁判所への申請がそのまま認められる)
カナダ/
ケベック州
不可
カナダ/
ブリティッシュコロンビア州
不可(合意に達している場合は、裁判官が書面を確認。裁判所に出頭する必要はない)
イタリア「支援付きの交渉」手続きの利用可。交渉は双方の弁護士が管理
イギリス/
イングランド・ウェールズ
不可
ドイツ不可
フランス不可
韓国可能(裁判所が夫婦の離婚意思を確認する)
中国可能
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まとめ

要約

離婚後の親権(共同親権/単独親権)・面会交流・養育費・協議離婚などについて、海外24か国の法制の調査結果を、国別にまとめた法務省による資料

基本情報
  • タイトル:父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果
  • 公表元:法務省 民事局
  • 公表日:2020年4月(令和2年)
  • 入手方法:ダウンロード(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00030.html
評価

★★★★☆ (目の前の離婚手続きに役立つことはないが、知識が得られた)

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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