★★★★★ 類書無し
親の離婚について、Q&A形式で子供の疑問に回答。多様なケースを取り上げている。
対象年齢は小学校高学年~中学生。参考書籍も多数掲載。
レビュー
この本はアメリカの弁護士が記して、日本の家庭裁判所調査官が訳しました。親の離婚に際して子供が抱く不安や疑問を質問の形でひとつ取り上げ、それに回答する。これを何度も繰り返して、この本は構成されています。
良かった点を4つ述べます。
その1)虐待があったケースや、離婚後に親が再婚するケースなど幅広く対応している
通り一遍の質問だけでなく、虐待や親の再婚も視野に入れた幅広い質問が繰り出されています。たとえば「親(=非監護親)に会いたくなったらどうしよう?」という、多くの子供の頭に浮かびそうな疑問の次に、「もし親に会いたくならなかったらどうしよう?」という質問が挙がっています。
逆に、子どもを嫌な目に遭わせるような片方の親と離れて住むことになった場合、ほっとする子どももいるようです。
離婚の話が続いている間、怒ったりわめいたり、殴ったりする親がいるでしょう。(略)世の中にはこういう問題が起きる家族はあるものですし、もしかしたらそれはあなたの家族に起きたことかもしれませんね。
回答は上記のように始まります。我が家の場合は「子どもを嫌な目に遭わせるようなモラ夫」だったので、多様な離婚のケースを想定に入れている点をありがたく感じました。
その2)対象読者が思春期くらいの子供。大人が読み上げれば低学年の子供もオーケー
大人に向けての離婚ガイドはたくさんあり、また子ども向けの絵本も何冊かは出始めましたが、特に小学校の高学年から中学生くらいの子どもに向けて直接書かれた本は少なく、それが、この本を訳したいと思った理由です。
これはこの本の巻末の「子どものための解説」で訳者が述べていることです。私も本を探しているときに、読者の年代によって本の選択肢の多寡が異なると感じていました。
もっとも、優しい語り口で内容も平易なので、大人が読んであげれば、低学年の子でも理解できると思います(漢字にルビが振られていない)。本の中で7~12歳の子供の生の声がちょこちょこ紹介されています。原著の想定読者は小学生くらいではないかと思います。
その3)たくさんの本が紹介されている
質問への回答にさらにプラスして、参考になる書籍が挙げられています。悩み深い子供の疑問が解消しないときの、次の一手が提示されているわけで、とても役に立つと思います。
その4)日本向けにカスタマイズされている
子供、親、支援者(カウンセラーなど)の三者それぞれに向けて、訳者が解説を寄せています。アメリカと日本では文化や制度が異なるので、理解の助けになりました。
また本文の中で紹介されている参考書籍も、日本人の作家・著者が書いた本が挙がっているところがあり、単純に翻訳しただけでないことが透けて見えます。
さらに「子どもたちにこそ読んでもらいたい……文字以上に子どもの気持ちを表わすイラストにもこだわりました」とのことで、描き下ろしのイラストが添えられています。セーラー服を着た少女や、正座したおばあちゃんが描かれていて、親近感を感じます。
全般的に「子供を助けたい」という、訳者の並々ならぬ情熱が溢れているように感じました。
私は子供にこの本を買い与えました。すっかり生活が落ち着いた今となっては、子供はこの本を開くこともないようですが、バタバタしていた頃はちょこちょこ目を通していました。その姿を見て、この本を買って良かったと思いました。色々な状況を取り上げているので、年齢が合うお子様みなさんにおすすめいたします。
なお、子供向けの離婚本の一覧は、以下からご確認いただけます。
まとめ
親の離婚前後で子供がよく感じる疑問を挙げてひとつひとつ回答。大事なのは助けてくれる大人に話をしてみること。きっと親の離婚を乗り越えられる。対象年齢は小学校高学年~中学生。
★★★★★ (我が子に買い与えた)
コメント