本『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』のレビュー

要約&感想

★★★★☆ ロングセラー

 「モラル・ハラスメントとは何か」「モラル・ハラスメントはどのように行なわれるか」「モラル・ハラスメントにどう対処すればよいか」の3部構成。情報の網羅性・正確性は随一。
 知識は得られるが難解で、応用するのは厳しかった。

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レビュー

 「モラル・ハラスメント」という用語を世に広めた名著です。著者はフランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏。

 この本は厚みがあり、細かい文字が並んでいて、ちょっと外から眺めただけで読み応えがありそうでした。実際に読んでみても、その第一印象は変わりません。「モラル・ハラスメント」を知らしめるに当たり、学術的な記述込みで、正確性に配慮しているように見受けられます。また家庭(夫婦間・親子間)と職場双方のモラハラを取り上げているなど、範囲を限定せずに網羅的に扱っています。

 「あなた」という二人称を使って読者(=被害者)に語りかけるモラハラ本もありますが、この本は違います。とはいえ、被害者救済を目的にしています。序章の「本書の目的――被害者の側に立って」で、筆者は次のように述べています。

私の目的は加害者の罪を問うことではない。そうではなく、ほかの人間にとって加害者がどれほど危険な存在であるかを知らせることによって、現在や未来の被害者が身を守れるようにすることである。

(略)

この本のなかではモラル・ハラスメントがどういうものであるか理論によって説明した部分は別にして、そのほかの部分では意図的に<被害者学>の立場にたって、すなわち被害者の側に立って話を進めている。

 著者のカウンセリングでの実際のエピソードが多数紹介されており、自分のケースに似たものが必ず見つかります。「そうそう!」と共感を得られますが、苦しくなる人もいるようなので注意が必要です。

 この本の対象読者は明示されていませんが、被害者自身と、精神科医やカウンセラー・心理士・セラピストなど被害者支援の専門家の双方へ向けているような印象を受けました。実際に「被害者へのアドバイス」という被害者向けの章や、「被害者の救済」という専門家向けの章があります。専門家とともに読書療法(ビブリオセラピー)に使うには良いと思いました(原著が発行されたフランスでは、こうした問題が発生したときにプロの助言を受ける文化が日本より発達しているようです)。

 私は一読したあと、その時々で訳者まえがきにある「本書の見取図」や、目次を確認してから、必要な部分をじっくり読み返しました。

 また私が相談した専門家の方で、この名著を読んでいない方はいらっしゃいませんでした。読書療法まではいかずとも、「この本のこの部分にこう書いてあった」と言うと、話が通じやすかったです。

 全般的な感想として、知識を得るにはすばらしい本だと思いますが、自分の苦しい状況を打破するには別の書籍のほうが実践しやすかったです。

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子供について

 子供に対するモラル・ハラスメントについて「はっきり言って子供に対する精神の虐待である」と断じています

 夫婦間のモラハラの被害者(モラ夫の妻、モラ妻の夫)が、子供に不適切な対応をしている例も挙げられており、ドキリとします。

ふだんから配偶者に暴力をふるわれているほうの親も、子供に対して暴力をふるうことがある。こちらの親は配偶者から攻撃を受けても、反撃をすることができない。そこで、配偶者に対しては抑えていた怒りが暴力となって子供に向かうのだ。

モラル・ハラスメントの加害者の配偶者は、自分自身も支配下に置かれているので、子供の苦しみを聞いたり、あるいは弁護したりして、子供を守ってやることができない。(略)加害者から攻撃を受けているもうひとりの親が自分自身を守ろうとすると、もっとひどくなる。そちらの親は子供がモラル・ハラスメントを受けても見てみないふりをして、軽蔑や愛情の拒否など、加害者の攻撃に子供をひとりで立ち向かわせてしまうのである。

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対処方法

 もちろんモラハラへ対処するためのアドバイスもあります。家庭内モラハラについて割かれているのは7ページ分で「駆け足で紹介」という体に感じました。実際に活用するには、もう少し詳細な情報がほしいところです。

 アドバイスのひとつに「相手と対立する」というものがあります。

被害者は身動きできない状態から抜けだし、相手との間に対立を引き起こさなければならないのだ。自分のほうから対立を引き起こしたことによって、被害者はむしろ加害者のように見えるかもしれない。しかし、そんなことを恐れてはいけない。状況を変えるためには、被害者が行動に出るしかないのだ。

私

私はこれを実践しました。うちのモラ夫に「くっそモラハラ野郎!」と言うなどしました(← たぶん、そういうことじゃない)。そして確かに私への攻撃は減っていきましたが、長女にモラ夫の執着の対象が移ってしまいました。この点については、今でも忸怩たる思いがあります。

 この本の内容を実践するのが難しいと前述した理由としては、実践不可能というだけでなく、間違って実践してしまう意味も含めています。

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まとめ

要約

「モラル・ハラスメントとは何か」「モラル・ハラスメントはどのように行なわれるか」「モラル・ハラスメントにどう対処すればよいか」の3部構成。ボリュームが多く、やや専門的な記述も含まれる。

評価

★★★★☆ (網羅的な知識は得られるが、応用するのは難しかった)

基本情報
  • タイトル:モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • 著者:マリー=フランス・イルゴイエンヌ(精神科医、家族心理療法家)
  • 訳者:高野 優
  • 出版社:紀伊國屋書店
  • 発行日:1999年12月20日

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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