★★★★★
親が我が子への虐待を告白し、謝罪する手紙を74人分収録。毒親の率直な考えを知ることができる点で貴重。
ただし、読後感は胸クソ悪い。
レビュー
本の位置づけ・構成
この本は『日本一醜い親への手紙』と『もう家には帰らない――さよなら 日本一醜い親への手紙』に続き発行されました。合わせて三部作です。
さまざまな告知方法を用いて、子供を持つ父親・母親から集めた「わが子への謝罪の手紙」が計74通収録されています。
いわば毒親からの手紙集。他に類を見ません!
これだけの手紙を集める苦労について、この本を企画・編集した今一生氏は、巻末で次のように語っています。
ベストセラーになった前作の紙上やホームページ、公募雑誌での応募告知はもちろん、愛読者の方や、親子関係を考える全国の草の根的な団体に二千通を越えるDMを打ち、ホームページにリンクを呼びかけ、親御さんの運営する各サイトにEメールで告知したほか、公募チラシを作り、約三千枚を東京都内・近郊の公共施設に設置したり、イベント会場や街頭で連日配り歩くなど、スタッフの人海戦術が続いた。まさに“総力戦”だった。
(略)
前作の時は二冊とも三カ月で三百通以上の手が集まったのに、本書への手紙は再三〆切りを延長しても、八カ月で百通を集めるのがやっとだった。
手紙には、あらゆる年代の子供たちが登場します。赤ちゃん、幼稚園・保育園・学校に通う子供、成人後の子供。親の前から姿を消した子も、他界した子もいます。
「わが子への謝罪文」を募集したはずなんですが、まったく謝っていない文面の手紙も。
感想等
私は、モラハラ夫が娘・息子にとっては毒父だ、と思い至り、子供を連れて離婚しました。そのモラハラ元夫の思考回路を考えるにつけ、毒親が子供に謝るなんてことはあるのか、はなはだ疑問を抱きながら、本を読み進めました。
本の中には子どもを愛していないわけではなく親自身を取り巻く状況に同情を禁じ得ないケースや、心の底からの贖罪意識が感じられる手紙もありました。過ちを認めて、子供に償おうとあがいている感じがするものも。
ただ、目立つのは、子供のためではなく、自分のために書いたような手紙の数々。我が子に謝ることではなく、自分の心の安定を図ることが目的のように感じられます。自分が悪者にならないように自分の言動にもっともらしい意味づけをしたり、責任を自身の親や配偶者、果ては子供に転嫁したり、自分への同情を引こうとしたり。
たとえば「心の中でいつも詫びている」「詫びはあの世でする」ってあるのですが、これだと子供には謝っていない。贖罪意識があることをアピールしているだけ。
あるいは「子どものクセに生意気な口応えをしたのが悪い」だなんて子供を非難したり、「あと何年たったら、母である私の思いを理解してもらえるのだろう」のように子供に要求したり、謝罪する人がやることじゃない。
これは、子供が救いを得るために読む本ではありません。毒親自身が読んだところで、自分を正当化するネタにするなど、良くない影響があるかもしれません。
この本を私がお勧めするのは、毒親の心理を知りたい方です。よろしかったらお手に取ってください。
まとめ
親が我が子への虐待を告白し、謝罪する手紙を74人分収録
★★★★★ (毒親の率直な気持ちを知ることができる。ただし読んでも癒されない)
コメント