★★★★★
共感を得られ、問題の軽減にも役立つ。
モラハラを生む社会的背景(モラ文化)と夫・妻がそれを取り込む原理、子供への影響を論じる。さらに、離婚の進め方や結婚前にモラ夫を見破る方法を伝授
レビュー
本のあらすじ・位置づけ
これは離婚を扱う弁護士が著したモラハラ本です。離婚についても取り上げてはいますが、分量は1章分だけ。やっぱり離婚本って言うより、モラハラ本でしょうね。離婚弁護士さんが書く本といえば、法的な側面から有利な離婚について几帳面に論ずるものが定番ですが、その中で異彩を放っています。
章立ては次のとおり。
- 第1章 あなたは、夫が好きですか、嫌いですか?
- 第2章 なぜ男は結婚すると変わるのか?
- 第3章 なぜ女は被害妻となるのか?
- 第4章 モラハラが夫婦、子どもに及ぼすもの
- 第5章 モラ夫を育むモラ文化
- 第6章 我慢か、離婚か
- 第7章 離婚の進め方
- 第8章 婚前モラチェック
守備範囲が広いと思いませんか? モラハラの要因・背景、子供への影響、離婚、結婚について、著者が弁護士としての活動の中で観察した実態と、幅広い知識をベースに解説。4コマ漫画を挟みながら、弁護士とは思えない(?)平易な言葉で読者に語りかけます。
著者について
ネット上でいろいろと情報発信をされている弁護士さんです。「モラ夫バスター」こと大貫 憲介氏のことを、私が初めて知ったのもネットでした。「ハーバービジネスオンライン」(2021年5月で配信停止したネットメディア。現在アクセスできない)で連載されていた『モラ夫バスターな日々』という連載記事にたどり着きました(今このタイトルで検索すると、まったく関係のない個人ブログが出てきます。パクった?)。
大貫氏に限らず、こう女性を援護する男性って、同じ男性(一部)から謂れなき攻撃を受け、レッテルを貼られやすいんですかね。この本から引用します。
私は、ツイッターやフェイスブック、各種ウェブメディア等で、モラ夫やモラ文化を告発してきた。モラ夫たちからは、「モラハラ教の教祖」と揶揄され、何種類かのあだ名もつけられている。私自身は、「敵からも愛されている」と理解することにしている。
Amazonのレビューなんかでも確認できますが、著者への批判(というか脊髄反射での攻撃)の内容が、著者の言うモラトークの話法そのものでワロタ! つまり「言ってもいないことを、勝手に付け足して反論」していたりします。
決してラクな状況ではない中で、明るく情報提供してくださって、感謝しています!
感想等
「共感」と「問題解決・軽減」が両立する本です。弁護士さんと言えば、法的な側面では心強い味方になり得るが、こちらの心理面まではケアしてくれない。小難しそうなことを言われそう。そんな風に思っていましたが、良い意味で裏切られました。
とりあえず、超分かりやすい! 4コマ漫画やイラストを挟みつつ、易しい言葉、短い文で解説がなされています。「健全男子」「モラ文化」「脳内モラ夫」など、単語レベルで言い得て妙な表現も。
そして全編を通じて、モラ夫の妻たちの心情に寄り添っています。そもそも本のタイトルが「夫が嫌い」だし。読んでいて「私も!」「そうそう!」って膝を打つ描写が随所にありました。“なぜかツライ”という気持ちに説明がつくことで、心がちょっぴりすっとします。
また、この本はモラハラのカラクリも教えてくれるので、モラ夫に騙されていたことが解消されますよ。一例として、「モラ夫は弁が立つ」説のトリックを本から引用します。
ほとんどの被害妻たちは、「夫は弁が立つ」「ソトヅラがよいのでモラ夫に見えない」と述べる。私は、「私が担当した被害妻たちは、ほぼすべてがそう言います。ですが、本当に弁の立つモラ夫に出会ったことはないです。それに、ほとんどのモラ夫はモラ夫丸出しです」と説明する。
(略)
被害妻たちのほとんどは、モラ夫と言い争いをしても勝てない。しかし、その理由は彼の弁が立つからではない。モラトーク(モラ夫の話法)にはルールがなく、言い負かすためにはどんなことでも言い立てるからである。
そして、9通りのモラトーク(以下)を詳説して「どれもが、詭弁あるいは屁理屈である」としています。
- モラトーク・その① 相手の言い分を奪う
- モラトーク・その② 責任を押し付ける
- モラトーク・その③ 妻の努力不足を糾弾する
- モラトーク・その④ 言ってもいないことを、勝手に付け足して反論する
- モラトーク・その⑤ いきなり言うな
- モラトーク・その⑥ 理解させないお前が悪い
- モラトーク・その⑦ 理解できないお前が悪い
- モラトーク・その⑧ 「普通」で押し切る
- モラトーク・その⑨ 俺に言わせれば、それは間違っている
私自身の経験で言えば、ウチのモラ夫(離婚済み)はその①とその⑧が多かったです。私が「モラハラ野郎!」って言ったら、「こっちがモラハラされている」ですって。あと「〇〇するのが普通でしょ」って口癖のように言っていたなぁ。ヤツは言い立てる勢いと、長丁場のやり合いも厭わないしつこさで押し切ってきました。
当時は、あっち(モラ夫)の方がおかしいこと言っているはずなのに、どうも議論に負ける、と訳が分かりませんでした。言葉を交わさないほど関係が悪化して、LINEでやり取りするようになってから、ようやくヤツのロジックの綻びが目につくように。
この本(2022年発行)が手元にあったら、長きに渡って惑わされることは避けられたかも、って思います。
さらには、現実的なモラハラ回避方法の一つの選択肢として、離婚も挙げています。念のため申し上げておきますが、ネットで批判されている「離婚一択」みたいな離婚主義的な話の展開になっているわけではありません。それに、目標を立てたり、経済的な算段をするなど、事前準備も説いています。
夫が嫌いな方に、ぜひぜひ読んでいただきたい一冊です。
なお、モラハラ本の一覧は、以下からご確認ください。
まとめ
モラハラを生む社会的背景(モラ文化)と夫・妻がそれを取り込む原理、子供への影響を論じる。さらに、離婚の進め方や結婚前にモラ夫を見破る方法を伝授
★★★★★ (共感を得られ、問題の軽減にも役立つ)
コメント