本『良心をもたない人たちへの対処法』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★

ロングセラーを記録している『良心をもたない人たち』の続編。

身近にいる「良心をもたない人」への具体的な対策を伝授。相手との関係を断てない場合に役立つ。

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レビュー

 『良心をもたない人たち』(レビュー)の続編です。前著では「良心をもたない人」について(精神科医などの専門家ではなく)一般の人に向けて紹介・解説を行い、一通りの対策を挙げています。こちらの続編では、そうした人々への具体的な対処法を伝授しており、より実践向きです

 ところで「良心をもたない」とは? この本では「心に穴が空いている」と表現しています。

 邪悪とは人の心に侵入してくる魂などではなく、人間の脳の基部に備わる正体不明の影でもない。(略)目で観察したり、少なくとも実感できたりする形ある存在ではなく、欠落した状態こそが邪悪で、本来そこにあるべき何かが存在しない空虚な状態こそが「邪悪」なのである。
 邪悪とは、心に空いたうつろな穴であり、それ以上でもそれ以下でもない。

 つまり良心をもたない人は「性格と神経心理学側面の両面で善悪の判断能力が欠落している」のです。そのため「相手の心に深刻な傷を負わせながら、当の加害者はやましさをまったく感じていない」ということが起こります。

 こうした良心をもたない人について、前著では「サイコパス」という呼称を多用していました(原著では混用されていたが、訳書で統一)。こちらの続編では「ソシオパス」という用語を採用。「訳者あとがき」によれば、「ソシオパシー」を原則として使うのが著者の意向だそうです。

 ただ、なかなか定義があいまいな言葉のようです。以下も続編からの抜粋です。

「ソシオパシー」という考え自体は決して新しいものではない。良心をもちあわせていない心の状態は、少なくとも二世紀前から人間の挙動を観察する世界中の研究者によって説かれ、「妄想なき狂気マニー・サンズ・デリール」「悖徳狂はいとくきょう」「道徳的白痴」「精神病質的劣性」「精神病質サイコパシー」「社会病質ソシオパシー」など、さまざまな名前で呼ばれてきた。
 (略)ソシオパシーという用語と、「サイコパシー」を含めた他の呼び名とのあいだには明確な定義が確立されているわけではない。

 前作に引き続き、身近な「となりのソシオパス」を扱っています。日常から切り離されたところにいる、作り話のように過激なソシオパス・サイコパスに焦点を合わせているわけではありません。実際のところ、家庭内暴力、DV、虐待に関連するトピックが多く登場します。本の目次(以下)から、それが透けて見えるでしょう。

  • プロローグ 良心をもたない人たちとの戦い
  • 第1章 心に空いた穴――ソシオパシーを理解する
  • 第2章 自分の血を引くソシオパス――良心をもたない子供たち
  • 第3章 職場に巣くう邪悪な者たち――同僚と上司がソシオパスだった場合
  • 第4章 法廷のソシオパス――親権をめぐる戦い
  • 第5章 もっとも冷酷な人間たち――命を奪うソシオパス
  • 第6章 ソシオパスの影響圏を脱出する――自分を守る10のガイドライン
  • 第7章 ソシオパスとナルシシスト――反社会性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害

 第2~5章では、前著を受けて著者が受け取った反響の中で、よく見られるケースを全4つ取り上げ、それぞれに具体的な対処法を述べています。また第6章では、その根拠となる10個のガイドラインを提示。念のためお伝えしておくと、著者は最善の方法はソシオパスとの接触を断つこととしています。しかし、それができない抜き差しならない関係もありますよね。第6章で挙げられているのは、ソシオパスと離れられないことを前提としたガイドラインです。「逃げ方」「棄て方」みたいなことは、載っていません。

 第7章はソシオパスとナルシシストの違いについて述べています。やはり著者への問い合わせが多い内容だそうです。端的に対比している部分を抜粋します。

 ソシオパスの場合、欠けているのは良心と他者への共感の両方だが、ナルシシストに欠落しているのは他者への共感だけなのだ。ソシオパスは他者とは感情的に結びつくことができず、他者の感情を直接感じ取れない。これに対してナルシシストは、他者の感情は感じ取れないが、彼らなりの形で他者とのつながりを結ぶことができるのだ。他者との関係を結べるので良心が何かを知っている。ただし、他者が何を感じて何を必要としているのかがまったくわからないので、良心にもとづいてふるまおうとしても彼らのその能力は致命的な欠陥を負っている


 サイコパスには罪悪感というストッパーがない――前著『良心をもたない人たち』のこの解説を、私はよーく覚えています。なぜってこれで、謎だった我がモラハラ夫(当時、今は離婚済み)の言動についてきっちり説明が付いたからです。普通の人間ならできないこと(悪いこと)をやってのけ、人外の生き物のような不気味さがありました。

 他の本では詳しい解説があまりない状況について、この本は取り上げています。たとえば、私はモラハラ夫との離婚調停・裁判で一番モメたのが、子供の親権に関してです。当時この本(2020年12月 出版)があれば、第4章の記載内容は大いに役立ったはず。

 また第2章では、我が子がソシオパスではないかと恐怖を感じる親のエピソードが登場します。そうした親の姿に、私は元姑との共通性を見ました。結婚前に元モラハラ夫から彼の母親の話を聞いているときには、素晴らしき母親のように感じました。元姑は結婚には大賛成! 今なら分かる。厄介払いだったんでしょうね。結婚や出産を経て、だんだん「息子の言いなりの母親」像が見えてきました。ただ理解した時には、色々と遅かった……。


 第6章で挙げられているガイドラインの第一は「相手の正体を正しく理解する」です。家庭や職場にいるソシオパス・サイコパスから自分や家族を守るのに必要な情報を得るために、前著と共におすすめいたします

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まとめ

要約

身近にいる「良心をもたない人」への対応策を、4つのシチュエーション別に紹介。関係を断ち切れないケースで役立つ。

良心をもたない人たち』の続編。

評価(お役立ち度)

★★★★★

基本情報
  • タイトル:良心をもたない人たちへの対処法
  • 著者:マーサ スタウト(米国)
  • 訳者:秋山 勝
  • 出版社:草思社
  • 発行日:2020年12月18日
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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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