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振れ幅の大きい人生を歩んできた漫画家の西原理恵子氏が、女の子たちに「人生で覚えていてほしいこと」を語りかける。
世間知を高めることで、理不尽な状況を察知しやすくなる。
レビュー
振れ幅の大きい人生を歩んできた漫画家の西原理恵子氏が、女の子たちに「人生で覚えていてほしいこと」を語りかけます。道を外さず立派な人生を歩んできた方が、高説を垂れるのとはまるで別物!
西原氏はDV家庭で育ち、親の離婚・再婚を経験。長じては、一男一女をもうけた後に、DV夫と離婚・再同居・死別します。今現在は高須先生とヘリで飛び回るニュースが流れてきますよね。
本の中には、西原氏ならではの実感がこもった教えがたくさん。一部を本から引用します。
- 必ず理不尽な目に遭うことがあるんですよ、人生って
- これからいろんな壁にぶつかると思うんですけど、そういうときに真正面から行かなくてもいいからね
- 人の命なんて平等じゃないし、早く死んじゃったほうがいい人もいるに決まってるんだから
- 現実、別れるにはお金いります
必ず仕事と貯金を
そして男捨離 - (アルコール依存症のDV夫を念頭に)病人は医者しか診ちゃいけない。家族は診ちゃいけないんです。家族の愛情では病気は治らないんです
- とにかく娘には自分の幸せは自分で築いていってほしいなと思いますね。どんなときでも人生のかじ取りを人任せにしないっていう
- もしそこがいやなら逃げて下さい
アドバイスの裏にあるエピソードが強烈で、薄っぺらな言葉ではないことが分かります。
ただし一方で、そうしたエピソードや著者のバックグラウンドに対して、ネガティブな反応もあります。たとえば、一部の不幸話を一般化するなとか、著者の周りで起きるようなことは自分の周りでは起きないとか、著者のこういう言動はどうなのよとか。
かつての私だったら、同じように感じたかも。(本の主題とは別のところで気になることは、今でもチラホラ。使われている言葉がお下品とか)
ただモラハラ夫との別居・離婚を経た今となっては、見方が変わっています。自分だけは大丈夫とは到底思えません。自分は真面目に生きているつもりでも、理不尽なことは避ける間もなく降りかかってくるもの。家庭の中だけでなく、学校でも会社でもPTAでも理不尽な相手に出くわすかも。あるいは自分は巻き込まれなくても、自分の家族や友達は? このサイトでも「モラハラされている友達を助けたい ⇒ 元被害者の私が友人に感謝していること」という記事は人気なんです。
そんな世間の荒波に対処するには、問題が生じたときに、正しく違和感を感じ取って、頭にピピッとアラートが上がるだけの情報を握っていることが重要だと思います。この本は、個人レベルで世間知を高めるのにうってつけです。
モラハラ本には「被害者当人はモラハラ被害に気づきにくい」って書いてありますし、毒親本には「自分の親や自分が育った環境が当たり前だと思うのが普通」って書いてあります。そういう状況でも「なんかおかしいゾ」と認識するきっかけになり得る本です。
なお、この本の元ネタは、NHK BSのテレビ番組「最後の講義」。各界の著名人が「あなたは人生最後の日に何を語りますか?」というお題で、学生に向けてスピーチを行います。西原氏の「最後の講義」は2018年8月に放送されました。本のタイトルの「完全版」とは、未放送の部分も含まれているためです。
また『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(2017年発行)といった別の著書(活字本)・エッセイでも、同様のエピソードやアドバイスが登場します。『最後の講義 完全版 西原理恵子』(2020年発行)のほうが新しいので、このサイトでは後著を取り上げました。
本来は大学生辺りをターゲットにした本ですが、今現在、理不尽さを感じている大人にこそお勧めいたします。大人なら、毒っ気も楽しめると思います。
まとめ
振れ幅の大きい人生を歩んできた漫画家の西原理恵子氏が、女の子たちに「人生で覚えていてほしいこと」を語りかける。
★★★★★ (今すぐ役立たなくても、将来的に問題に巻き込まれそうなときに察知できる情報がある)
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