★★★★★
29通りの「ずるい言葉」に隠された発言者の底意や、ずるい言葉への反論を学べる。
メインの対象読者は中高生だが、大人にも。
レビュー
他人から言われた言葉に、モヤっとしたことはありませんか? 明確な悪口とか罵倒とかではありません。字面的には問題なさそう。でも発言の裏に、自己都合や自己弁護、自分の正当化なんかが潜んでいそうな、卑怯な感じがするいや~な言葉。
この本では、そうしたいや~な言葉を「ずるい言葉」と称して29個集めました。「あなたのためを思って言っているんだよ」これが本の一番最初に載っている「ずるい言葉」です。我がモラ夫(元)が、子供にはしょっちゅう、私にはたまに言っていた思い出の言葉!
その他、いくつかピックアップしましょう。
- はっきり言わないあなたが悪い
- もっと早く言ってくれればよかったのに
- いちいち取り合っていたらそいつと同じレベルになっちゃうよ
- 悪気はないんだから許してあげなよ
- これは差別ではなく区別
もし言われたら「ハッ! そりゃそうだね! 気づかせてくれてありがとう!」なんて、スッキリしますかねぇ~。
この本の中では、こうした「ずるい言葉」ひとつひとつについて、使用されるシーンを対話形式で再現。何がどうずるいのかを紐解きます。続いて次のふたつの観点で、発すべき言葉のヒントを得られます。
- 他人が「ずるい言葉」を投げかけてきたときに、何て言い返すか
- 自分が「ずるい言葉」を口にする代わりに、どのように表現できるか
さらには発言の根底となる考え方に対する指針や、関連用語の解説も掲載。
この本の素晴らしいところは、3点。まずは人々がなんとなく感じていることを、きっちりと言語化している点。方向性はまるで違いますが、ある種の「お笑い」との共通性を感じました。つまり、日常的な事象を切り取って深掘りし、おもしろおかしく表現するお笑い。私は読みながら「そう!そう!」とヒザを打っていました。
二つ目。そこから一歩進んで、モヤモヤを放置せずに言語化することの大切さが伝わってきます。これは本で例示されているシチュエーションやセリフに限りません。願わくば、我が子にも理解してほしい。
三つ目として、「ずるい言葉」を自分自身が発しないように、というメッセージも含まれている点。言われるとイヤですが、私自身が人をモヤっとさせることがあるかも。特に立場上、自分が圧倒的な強者になる「親」としては、考えさせられました。
たぶんモラ夫(元)のように、お為ごかしで自分の希望を子供に押しつけたりはしていないはず。でも、ちょっとバタバタしていると、面倒くさくて子供にぞんざいな受け答えをしてしまう……。
なお、この本のメインの対象読者は中高生で、対話例や解説は学生を念頭においたものになっています。ただし大人も対象として想定されています。実際にオバサンの私が読んでも、今まで意識さえしていなかったことに気付かされました。
言われたことにモヤモヤし、後で「ああ言い返せば良かった」と思ったことがある方に、ご一読をおすすめいたします。
まとめ
卑怯な感情が潜んでいる「ずるい言葉」を29個取り上げる。それぞれ対話例を挙げて、発言者の底意を分析。反論の仕方や、考え方の指針、関連用語を学べる。
★★★★★ (こう言えばよかった、次はこう言おう、と思う言い回しが見つかった)
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