★★★★★
男子の性にフォーカスを合わせた性教育の本。息子を被害者にも加害者にもしたくない親ごさんにおすすめです
レビュー
本のあらすじ
これは男子の性にフォーカスを合わせた性教育の本です。女子についての本や、男女双方を扱った本に比べて、圧倒的に著作が少ない分野ですよね。この問題について「まえがき」から引用します。
これまで特に男子は性についてまともに学ぶことはほとんどなかったと言ってよい。あったとしてもごくわずかの機会だったのではないだろうか。それにくらべて女子は、質・量ともに十分とは言えないまでも家庭や学校で繰り返し学ぶ機会があったし、尋ねようと思えば教えてくれる大人の女性が周りにいたことと思う。(略)
人類の約半数を占める男子は、性のもつさまざまな意味について、性のしくみや成り立ち、あり方などについて、大人たちからしっかりと教わることなく、いわば勝手に情報を集め、その情報に翻弄されつつひとりよがりの孤独な人生を生きてきたのではないだろうか。
それでも何とかやってこられたように思われたとすれば、その背景にかつては女性の忍従があった(制度としても)からである。しかしその後、時代が変わって女性が忍従しなくなったが、そうなると両者の関係は破綻に向かうようになった。
対象読者は明示されていませんが、性教育を行う側に向けた内容です。学校関係者や保護者に役立つ情報が満載です。
目次は次のとおり。
- まえがき
- 第1章 意外なデータ――自分の性に対する肯定感調査から
- 第2章 自らの性への肯定感を阻むもの
- 第3章 射精の快感とセルフプレジャー
- 第4章 男子大学生は「男子の性」の講義をどう聞いたのか
- 第5章 女子大学生は「男子の性」の講義をどう聞いたのか
- 第6章 男子の性被害の重さ
- 第7章 柔らかな関係づくりと性的自己肯定感――快楽の性を見つめ直す
- 第8章 男子への性教育のエッセンス
- 第9章 「性教育のこれまでとこれから」そして「その後」
- 参考図書
- おわりに
選定理由
この本を取り上げた理由は2つ。
1つ目。男子の性被害について、まとまった記述があるため(第6章)。このサイトでは虐待やDVについて扱っており、趣味の読書を活かして書評(レビュー)を公開していますが、今までに扱った本の中で、このトピック(男子の性被害)についての情報量は随一でした。
2つ目。性教育がDV問題(特に夫から妻へのDV)への対策となるから。――この点について、当初私は「風が吹けば桶屋が儲かる」ばりに、原因と結果が結びつきませんでした。よくAVで男性が優位・支配的に描かれているからと言われますが、この本を読むと、他にも様々なポイントがあることが分かります。
息子がいる身として、私は息子に性被害に遭ってほしくもないし、DVの加害者にもなってほしくない。二重の意味で、有意義な本でした。
感想等
この分野に踏み込むのは、なんとなく抵抗がありました。しかし読んでよかったと思います。私自身が誤解していたり、知らなかったりすることに色々と気づきました。
私は一男一女のシングルマザーです。娘とは将来的に話ができると思いますが、息子が相手となると想像がつきません……。息子のほうからも、母親に相談できないですよね? せいぜい予習をして備えます。
ご興味のある方は、ぜひご一読を。
まとめ
男子の性にフォーカスを合わせた性教育の本
★★★★★ (無知であることに気づけた)
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