本『隣のサイコパス――まんがでわかる』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★

向社会性サイコパス(一般の人々とともに普通に社会生活を送っている、犯罪者となりにくいサイコパス)との接し方について論じた本。

専門家(精神科医)が監修

分かりやすくて正確!

スポンサーリンク

レビュー

本のあらすじ・位置づけ

 サイコパスとの接し方について、専門家(精神科医)が監修した本です。

 サイコパスというと、映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場するレクター博士や、シリアルキラーという名称を提唱せしめた実在の連続殺人鬼テット・バンディのような超過激派を想像するかもしれません。

 しかし、この本で扱っているのは、誰の隣にでもいるような、別のタイプのサイコパス。まずはその定義から。

 作者はサイコパスについて「サイコパスの資質があっても、その大半は犯罪をおかすことなく一般の人々とともに普通に社会生活を送っている」として、「反社会性サイコパス」「向社会性サイコパス」という言葉を紹介。それぞれ次のように説明を加えています。

  • 反社会性サイコパス……衝動的でキレやすかったりと問題行動も多く、圧倒的脅威となる可能性のある「犯罪者となりやすい」サイコパス
  • 向社会性サイコパス……「犯罪者となりにくい」サイコパス。一般の人々とともに普通に社会生活を送っている

 重要な点は以下。

 ここで注意したいのが、犯罪者になりにくい向社会性サイコパスの場合もサイコパスの資質がもたらすトラブルは当然起こり得るということです。偏見はもちろん避けるべきですが、普通の人に対するのと同じ感覚で彼らに接していると、いつの間にか思わぬ事態に巻き込まれたりすることも。

 これを前提に、身近なサイコパスを見分け、対処する方法が述べられています

 本の構成は、冒頭の「Introduction」でサイコパスに関する基本的な情報を提示。続いて、7通りのサイコパスを紹介。それぞれありがちなエピソードを漫画で紹介し、その後に考察・解説を文章で付け加えています。

 モラ夫・DV夫を主に扱っているこのWebサイトを訪れた皆さんに、私がオススメするのは「Chapter 7 お父さんはサイコパス?」。息子(主人公)の視点で小学2年生から大学入学に至るまでの、父親(サイコパス)との関わりを漫画で描きます。母親や妹も登場しますよ。

 ご参考までに全7つのエピソードのタイトルを紹介します。「凶悪犯罪者」が登場するわけではないことが、お分かりいただけると思います。

  • Chapter 1 バイト先の厳しすぎる先輩
  • Chapter 2 仕切らずに仕切るやり手編集者
  • Chapter 3 職場を自分色に染める上司
  • Chapter 4 シングルパパは猫の手も借りる
  • Chapter 5 私のためにけんかをやめないで
  • Chapter 6 自称「かわいそう」な友達
  • Chapter 7 お父さんはサイコパス?

本の選定理由

 漫画による直感的な分かりやすさと、文章の説明による具体性・正確性を兼ね備えた良書だというのが、今回書評を掲載した第一の理由です。

 そして、もうひとつ、ほの暗い理由もあります。別の本『精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない』と対比するとおもしろいと思ったからです。こちらは先んじてレビューを公開していますが、内容も著者も非常にアヤシいんですよ。では、以下、比較表です。

隣のサイコパス――まんがでわかる
  [Amazon] [楽天] [レビュー]
精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない
  [Amazon] [レビュー]
作者監修者:名越康文
(精神科医)
著者:精神病院勤務者チーム
(医師とは言っていない)
内容医学的な診断基準が示された本『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』に沿って解説。
「反社会性パーソナリティ障害」「ソシオパス」といった用語も扱う。
漫画、図表、挿絵がふんだんに使われている。
医学的見地から説かれる内容は皆無。
用語の誤用あり。
自己愛性人格障害の人について「医師も匙を投げる」という立場で、精神医学を暗に否定している。
※ 「人格障害」は「パーソナリティ障害」に診断名が変更されている
分量‎ 単行本で208ページ薄っぺらい。頻繁な改行・改ページによるページ数稼ぎが顕著
評価Amazonのカスタマーレビューで☆が3.6個。1,085件の評価(2023/12/18現在)Amazonのカスタマーレビューで☆が3.9個。460件の評価(2023/12/18現在)

 ご覧のとおり、クオリティは違えど、どちらの本もAmazonでたくさんの人に読まれていて、なかなかの高評価を得ているんですよね。……理不尽なり。

 そういう理不尽さに対し、個人的にちょっとは溜飲を下げたいという気持ちと、真面目にやっている作り手さんを応援したいという気持ちから、この記事を書きました。

 なお、念のため「サイコパス」と「自己愛性パーソナリティ障害」とは似て非なるものです。『隣のサイコパス』から、違いを論じた部分を引用します。

サイコパスと似た側面を持つのが、人をだまし利用することをためらわない自己愛性パーソナリティ障害の人物です。ただ、行動自体は似ていても、そのベースにあるものは異なります。サイコパスは単なる退屈しのぎや自分の目的を果たすために人をだましますが、自己愛の未成熟から生じるパーソナリティ障害である自己愛性パーソナリティ障害の場合は、誇大ともいえる過度の自己愛から人をだまします。また、共感性の薄さなどもサイコパスと似ていますが、大きな違いが他者からのマイナス評価に敏感で傷つきやすいということ。何事にもあまり動じる(感じる)ことのないサイコパスとはここが決定的に異なります。

 この本の漫画に描かれたサイコパスは過激ではないですが、サイコスリラーに登場するような凶悪犯に通じる不気味さを感じます。人の心を持っておらず、まるで人外のような……。そういう人にお心当たりがある方は、ぜひご一読ください(広告の後に、記事はまだ続きます)。

隣のサイコパス――まんがでわかる

[Amazon] [楽天] [レビュー]

スポンサーリンク

感想等

 私はかつてモラハラ夫と生活を共にしていました。モラハラの真っただ中にいた当時、苦しさの訳や回避する術を知りたくて、関連のありそうな本を読み漁りました。

 現在は離婚して子供2人と暮らしています。今の穏やかな日々(小さなストレスやトラブルはありますよ)がもうずっと日常だったと勘違いしそうなくらい、精神面が落ち着きました。

 そして、モラハラ本なんかを改めて読んだときに、以前は知った気になっていたことが、今は深く腹落ちするような経験をしています。今回取り上げた本から1か所、そうした内容をピックアップします。前段で紹介した「Chapter 7 お父さんはサイコパス?」の漫画に登場する夫婦について論じた部分です。

サイコパスを含むカップルが結婚にまで進むということは、相手の方もどこかしら少々クセのある、ある意味必要以上に包容力や母性、忍耐力といったものを備えた人だったといえるのかもしれません。

 これを読んで「私のダメなところだ!」と自己反省できるようになりました

 元夫と別居する前の時期であったら「いじめられっ子にも問題がある」的な言説は受け入れられませんでした。また、モラハラ本なんかでは「どういう人がモラハラの被害に合いやすいか」をよく解説していますが、気遣いに溢れた優しい言い回しに、当時は自らを省みる方向へは思考が向かず。

 だって、自分の欠点を認められるほど、心の余裕はないですもん。

 今でこそ「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という警句が頭の中に浮かびます。私は「世話焼き」とよく言われますが、モラハラ夫との結婚生活を振り返って、相手を助長させるほど世話を焼くのはよくない、と深く深く身に染みました。

 元夫のほうは、普通よりずーっと助長しやすいヤツでした。そこまでしてもらったら申し訳ない、今度はお返しを、っていう感覚がないみたい。まあ「助長させる人 × 助長しやすいヤツ」っていう相性の悪いペアでした。

 こうした反省を生かし、今は相手の困りごとや窮状を察知しても(私は察知する能力が高いと思う)、手を貸す前にいったん考えるようになりました。私がするのと同じようには私に配慮・対応してくれなさそうな人だったら、相手から明示的に依頼があったときにのみ、もったいぶって対処します。粘着しかねない間柄だったら、申し訳なさそうに断ります。

 そんな相手は、この本の中のライト級サイコパスと被ります。対人関係で悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひ『隣のサイコパス』をお手に取ってください

隣のサイコパス――まんがでわかる

[Amazon] [楽天] [レビュー]

スポンサーリンク

まとめ

要約

向社会性サイコパス(一般の人々とともに普通に社会生活を送っている、犯罪者となりにくいサイコパス)との接し方について論じた本

評価(お役立ち度)

★★★★★ (分かりやすくて正確)

基本情報
  • タイトル:隣のサイコパス――まんがでわかる
      [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • 監修:名越 康文(精神科医)
  • シナリオ・文:ポンプラボ
  • 作画:松岡リキ
  • 出版社:‎ カンゼン
  • 発行日:2018年2月15日
この記事で取り上げたその他の書籍
  • 精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない
      [Amazon] [レビュー]

カテゴリー別人気記事

コメント

プロフィール

ロゴ

 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

タイトルとURLをコピーしました