本『パーソナリティ障害――いかに接し、どう克服するか』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★ ロングセラー

全10種のパーソナリティ障害について解説。もっと重要なことに、本人や周囲の人に対処策を提示。

巻末には、どのタイプのパーソナリティ障害の傾向があるかを確認できるチェックリストつき

重刷を繰り返し、電子書籍化もなされる。

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レビュー

 この本では、全10種のパーソナリティ障害について、それぞれ「特徴と背景」「(周囲の人の)接し方のコツ」「(当人の)克服のポイント」を示しています

 お察しのとおり、パーソナリティ障害を抱える人と、その周囲の人たちが想定読者。家庭や職場を舞台に、共存共栄する方法を提案しています。

 このサイトを訪れる方は夫のモラハラ・DVでお悩みの方が多いと思いますが、モラハラ夫を「棄てる」とか、DV夫から「逃げる」とかは書かれていません。

 著者は臨床を大事にする精神科医で、「心のエクササイズのため」に小説を執筆。この本は医学的な専門知識と文学的な表現力に裏打ちされた一冊です。私が言語化できなかったモヤモヤを巧みに表している文章に、頻繁にお目にかかりました。途中で差し挟まれているエピソードなんかは生き生きとしています。

 著者がこの本に込めた思いに触れられる部分を引用します。

 本書は、単なるパーソナリティ障害の解説書ではない。実際に、そういう問題を抱えている人や、身近にそういう人がいる場合に、克服や援助の際にポイントとなる点を具体的に記している。これは、私自身が、多くの患者さんとの関係の中で学んできたことであると同時に、私自身の人生から学んだことでもある。したがって、精神医学的な観点から書かれた生き方術の本でもある。

 なお、専門家(医師)に診断された、正真正銘のパーソナリティ障害の方だけでなく、それっぽい人も含めて論じています。本の中では、差し支えない範囲のものを「パーソナリティ」、病的なレベルなものを「パーソナリティ障害」と呼び分けています。

 目次は次のとおり。

  • プロローグ
  • 第I部 パーソナリティ障害の本質
    • 第一章 パーソナリティ障害とは何か
    • 第二章 パーソナリティ障害はなぜ生まれるのか
  • 第II部 パーソナリティ障害のタイプと対処
    • 第三章 愛を貪る人々――境界性パーソナリティ障害
    • 第四章 賞賛だけがほしい人々――自己愛性パーソナリティ障害
    • 第五章 主人公を演じる人々――演技性パーソナリティ障害
    • 第六章 悪を生き甲斐にする人々――反社会性パーソナリティ障害
    • 第七章 信じられない人々――妄想性パーソナリティ障害
    • 第八章 頭の中で生きている人々――失調型パーソナリティ障害
    • 第九章 親密な関係を求めない人々――シゾイドパーソナリティ障害
    • 第十章 傷つきを恐れる人々――回避性パーソナリティ障害
    • 第十一章 一人では生きていけない人々――依存性パーソナリティ障害
    • 第十二章 義務感の強すぎる人々――強迫性パーソナリティ障害
  • おわりに パーソナリティ障害をプラスの力に
  • 付録 パーソナリティ障害自己診断シート
  • 参考文献

 巻末には、身近な人や自分自身を客観的に知るのに役立つ「パーソナリティ自己診断シート」つき。数々の質問に当てはまるかどうかを答えていきます。この手のチェックリストの中でも特徴的なのは、以下2点。

  • 網羅的(全10種のパーソナリティ障害について簡易診断ができる)
  • 専門的(精神科医のバイブル『DSM-4』に準拠。なおDSMの最新版は第5版の『DSM-5』)

 この本は、パーソナリティ障害っぽさがある人と折り合いをつけてやっていきたい方、いっしょに過ごさざるを得ない方、あるいは自分自身にパーソナリティ障害の傾向があるかもと思う方におすすめです。

 内容が建設的&前向きなんです。当人にとっても、関わる人にとっても救いがあります。私が特にそう感じた部分を2つピックアップします。

 パーソナリティ障害の人は、幼い頃から抱えている生きづらさを必死に補おうとして、特別の能力を身につけ、磨きをかけていく。ハンディを持つがゆえの、代償性過剰発達が起こりやすいのである。それが、適材適所のチャンスに恵まれれば、一つの才能として開花することもある。

 十年ほど前から医療少年院で仕事をするようになったことは、大きな転機であった。そこで私は、重いパーソナリティの問題を抱えた子供たちに、大勢出会うこととなった。子供たちは、どの子も劣らず重いものを抱え、二十年に満たない時間の中で、無残なほどに壊されていた。だが同時に、若さゆえに大きな可塑かそ性を持ち、目をみはる成長や変化を示すことも、しばしばだった。

 まあ、私自身はもはやモラ夫(パーソナリティ障害っぽい。離婚済み)に関わるのはまっぴらゴメンなんですが。一生会いたくもない。

 身近な例で言うと、元姑にぴったりな本だと思います。今、振り返ってみると分かるのですが、元姑は自分の夫だけでなく息子(私のモラ夫)にも悩ましさを抱いていました。一方で、夫とも息子とも離れられないんじゃないかな。この本からは、その辺りのツラさへの解説と、対策のヒントが得られるでしょう。

 自分あるいは他の誰かがパーソナリティ「障害」なのかはさておき、この本によって、パーソナリティにどういう傾向があるのかを知って、対策を立てることができます。ぜひご一読を

 

 なお、たまに「モラハラ・DVは自己愛性パーソナリティ障害などの病気のせい」という言説を目にしますが、私は語弊があるんじゃないかと思います。詳細は以下の記事をご確認ください。

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まとめ

要約

全10種のパーソナリティ障害について解説。さらに本人や周囲の人に対処策を提示。巻末には、どのタイプのパーソナリティ障害の傾向があるかを確認できるチェックリストつき。

評価(お役立ち度)

★★★★★ (かつての知り合いのパーソナリティの傾向なんかもチェックできて、おもしろかった)

基本情報
  • タイトル:パーソナリティ障害――いかに接し、どう克服するか
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  • 著者:岡田 尊司(精神科医)
  • 出版社:PHP研究所
  • 発行日:2004年(新書 初版)

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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