本『心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK――4タイプでわかる』のレビュー

うーん

★★ ☆☆☆

分析や対処法がピンとこない。モラハラ本ではない。

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レビュー

本の位置づけ・著者について

 妻の言動に悩む男性(夫)に、対策を提案する本です。タイトルに「モラハラ」とありますが、モラハラ本ウォッチャーの私の認識では、これはモラハラ本ではありません。タイトルにキャッチーな用語を、お気軽に含めたような印象。

 著者は「夫婦問題カウンセラー」の肩書で活動しています。本の中身は“著者に持ち込まれる「夫婦問題」を扱っている”といったていです。著者は独自に「GPS型」「マイペース型」「上司型」「暴発型」の4タイプに妻を分類しており、この分類に沿って議論が展開されます。「モラハラ」を軸にしているわけではありません。

 どうも気になるのが、根拠や裏付けが乏しく、著者独自の見解や解釈が目立つ点。

 たとえば、この本によるモラハラの定義は、一般的なものよりだいぶ広く「相手に精神的な苦痛を与えること」(2ページ)としています。この定義だと、相手が見知らぬ人であっても、あるいは1回だけ相手にツラいとかキツいとか思わせてしまっても、モラハラってことになるんじゃないかと。

 モラハラという用語を広めるきっかけとなった本『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』(レビュー)では、肉体的な攻撃を加えない「精神的な暴力」としてモラハラを扱っています。誰でもついやってしまうような「精神的な苦痛」を与える行為と、真正のモラル・ハラスメントとの違いを表している部分を、この本から引用します。

 確かにモラル・ハラスメント的な行為をすることは誰にでもある。だが、そういった行為は一定の期間に何度も繰り返されたりしなければ、他人の心を破壊するまでには至らない。人間は誰でも――たとえば怒った時などに、相手を傷つけるようなことを言ったりしたりする。だが、そういった行為は「あんなことはしなければよかった」と必ずあとで反省されるものだ。だが、モラル・ハラスメントの加害者はそんなことはしない。自分を省みることなどは決してしない人間なのだ。

『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』

 一方で、『心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK』では、暴力を振るう妻(身体的暴力を行う妻)も取り上げています。この点も「モラハラ本ではないよね」って思わせるポイントです。ちなみに、著者の分類のうち「暴発型」が身体的暴力を振るう妻です。

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感想等

 真正のモラハラ妻や暴力妻に悩む夫がこの本を読んでも、救われないと思います。

 モニョらざるを得ないポイントは細々とありますが、ヤバみが深い、著者の見解を1点だけ引用します(太字は原文ママ、引用部分では以下同じ)。

 ところで「男性のDV加害者」と「女性のDV加害者」の「目的」は、少し種類が違うと私は感じています。
 夫が加害者の場合、妻に暴力を振るうことによって恐怖心を与え、思考や行動をコントロールし、支配することが目的であることがほとんどなのに対し、妻が加害者の場合は、夫に恐怖心を与えて支配することが目的の人はそれほど多くはありません。

 それよりも、自分の要求が上手く夫に伝わらなかったり、聞き入れてもらえなかったりすることがストレスとなり、ストレスがピークを越えると、それを「伝えるための手段」として暴力につながっていることが多いのです。

36ページ

 “妻が加害者の場合は、夫に恐怖心を与えて支配することが目的の人はそれほど多くはありません”というのは、著者の解釈の間違いでは。女性が暴力を振るう目的を「伝えるための手段」としていますが、もっと先、妻の言い分に夫を従わせるところまでが目的じゃないですかね。

 夫が「君が要求していることは、○○だね」って理解したら、それで妻が納得するわけじゃないですよね。同じ段落で「聞き入れてもらえなかったりすることがストレス」って書いてあるとおり、夫が「でも、それは受け入れられない」って言ったら、怒って暴力を振るいません? たとえ妻の要求が理不尽なものであっても。

 なんか著者の解釈では、男の暴力より、女の暴力のほうがまだマシ、みたいな印象……。

 実際、引用した部分の後には「夫の理解と協力次第で改善しやすい場合もあります」と続きます。この本には他にも、被害者(夫)に善処・ 忍耐を求めるシーンがたびたび登場。なぜ被害者のほうが理解・協力をしなくてはならないのか、大いに疑問です。夫から妻へ向けた暴力でも、子供同士のいじめであっても、被害者に対処を望むんですかね。

 前提として、以下のような家族の理想像が著者の中にあって、それが読者に押し付けられているような感じを受けました。

 私がこの本を書いた最大の目的は、「家族」という“チーム”を最強なものにして、みんなが幸せになることです。密室で起こっている夫婦の現実や、妻の生態を知っていただき、スムーズな関係を築くことはあなたの人生で一番基本的な部分がうまくいくということです。

4ページ

 パートナーからモラハラや暴力を受けてなお、自分が譲歩してでも家族としての幸せを追求するのはツラすぎる(離婚一択というのも違うと思いますが)。

 「夫婦関係修復専門はあとふるアドバイザー」が著した『モラ夫のトリセツ――モラハラ夫と幸せに暮らす、秘密のテクニック』(レビュー)と同じニオイを、「夫婦問題カウンセラー」による『心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK』に感じました。

 夫向けのモラハラ本という点に希少価値があると思って読み始めましたが、なんだかガッカリな読後感……。あんまりヒドくないモラハラ妻とか、多少言動に問題がある妻とかがいる夫には、役立つかもしれません

心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK――4タイプでわかる

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 なお、モラハラ妻に実際に悩んでいる男性に役立つ本を1冊挙げるなら、『離れたくても離れられないあの人からの「攻撃」がなくなる本』がおすすめです。離れられない事情があり、共存を余儀なくされている人に、ひとまず「愛」は脇に置いて、「平和」を作ろうと呼び掛けています。

 あるいは、妻に「攻撃されている」というより「振り回されている」くらいの、ライトなモラハラであれば、『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』がよいかもしれません。

 両方とも同じ著者の手によるものです。よろしかったら、以下から書評(レビュー)をご確認ください

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まとめ

要約

妻の言動に悩む男性(夫)に、対策を提案。「夫婦問題カウンセラー」の著者に持ち込まれた夫婦問題を扱う。

評価(お役立ち度)

★★☆☆☆ (タイトルにモラハラとあるが、モラハラを語っていない)

基本情報
  • タイトル:心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK――4タイプでわかる
      [Amazon] [レビュー]
  • 著者:高草木たかくさぎ 陽光はるみ
  • 出版社:‎左右社
  • 発行日:2019年5月31日
この記事で取り上げたその他の書籍
  • モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない
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  • モラ夫のトリセツ――モラハラ夫と幸せに暮らす、秘密のテクニック
      [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • 離れたくても離れられないあの人からの「攻撃」がなくなる本
      [Amazon] [楽天] [レビュー]

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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