本『モラル・ハラスメントの心理構造――見せかけの愛で相手を苦しめる人』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★

特定の相手からの「あなたのため」という言葉が、苦痛な方向け。親子間のモラル・ハラスメントを多く扱っている。加害者と被害者の心理がよく分かる。

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レビュー

 この本はモラハラ本です。モラハラの中でも、本当は自分のためなのに「あなたのため」といった美徳(モラル)を理由に攻撃するタイプのものに限定しています。以下は序章からの引用です。

 フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴエンヌ著『モラル・ハラスメント』の中のモラル・ハラスメントという意味は、パワハラ、セクハラをも含めて、その上位概念である。それらをすべて含む意味である。

 私がこの本で使っているモラル・ハラスメントという言葉は、あくまでもモラルによるハラスメントである。あくまでも美徳による支配のことである。 

 目次は次のとおり。

  • 序章 モラル・ハラスメントの現実
  • 第1章 モラル・ハラスメントによる悲劇
  • 第2章 モラル・ハラスメントの特徴
  • 第3章 モラル・ハラスメントの心理的罠
  • 第4章 モラル・ハラスメントはなぜ危険なのか
  • 第5章 モラル・ハラスメントとの戦い方

 最終章で対処法が挙げられていますが、この本の秀逸なポイントは加害者・被害者の心理の洞察・描写です。

 「あなたのため」という言い分は親子間で成り立ちやすいためか、本の中で頻繁に親子間のモラハラが登場します。

 なにせ本の冒頭で、親から子への愛情について次のように記しています。

 最も望ましい親は子どもを愛している親である。
 次は子どもを愛していないが、そのことを知っている親である。
 最悪は子どもを愛していないのに、愛していると思っている親である。
 最悪よりももっと酷いのは、子どもを情緒的に虐待しながら、子どもを愛していると信じこんでいる親である。

 親が何を考えているのか知りたい、毒親本の読者にぴったりです。分かりやすいダメ親ではなく、巧妙な毒親を取り上げています。

私

 この本に登場する「美徳による支配」をする親の記述に、私は我が家のモラ夫の姿を見ました。しつけのため、あるいはもうちょっと高尚に(?)教育のためという理由で、子供達の行動・思考をコントロールしようとしていました。私の頭にはしょっちゅう「お為ごかし」という言葉が浮かびました。

 著者が日本人研究者(男性)なので、エピソードに既視感を覚えます翻訳本より日本の状況にマッチする記述が多い印象です。

 なお、夫婦間や、会社・近所などのコミュニティの中でのモラハラにも言及しています。また男性だけを攻撃者として扱っているわけではなく、問題のある女性も数多く登場します。モラ妻・メンヘラ妻を持つ男性の方にも読みやすいと思います。

 長いこと体の不調の原因が分からなかった人が、病名が分かり対策が打てるようになってホッとするように、心の不調の理由を知ることが精神的に良い方向へ向かう第一歩となるかもしれません。「あなたのため」という言葉を振りかざす人に対して、説明しづらい苦しさを抱えているようでしたら、ぜひご一読ください。

 なお、改題して『モラル・ハラスメントの心理』というタイトルで、文庫本も発行されています。

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まとめ

要約

見せかけの愛を用いたモラハラについて、現状・特徴・危険な理由・対処法を取り上げる。

評価(お役立ち度)

★★★★★ (モラ夫に言い返すネタを得られた)

本情報
  • タイトル:モラル・ハラスメントの心理構造――見せかけの愛で相手を苦しめる人(単行本)  [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • 著者:加藤 諦三
  • 出版社:大和書房
  • 発行日:2013年6月15日
この記事で取り上げたその他の書籍
  • モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない  [Amazon] [楽天] [レビュー]
  • モラル・ハラスメントの心理(文庫本)  [Amazon] [楽天]

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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