Kindle本『精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない』のレビュー

おすすめしないポイント

★☆☆☆☆

本の内容に間違いあり。分量は薄っぺらい。著者はアヤしい。

スポンサーリンク

レビュー

本のあらすじ・位置づけ

 Amazonの電子書籍Kindleで、自費出版した本。

 モラハラや自己愛性人格障害について、さらっと説明。内容が間違っているんじゃないかとか、語弊があるんじゃないかとか、誤解を招くんじゃないかとか思う箇所もちらほら(具体例は後述)。

 モラハラ「対策」よりも、こうした説明のほうにページ数が割かれています(本のタイトルに「モラハラ対策」とありますが)。

 なお、この本で挙げる対策では、精神医学的なアプローチは一切なされていません。イチオシの対策は「逃げる」こと。以下、引用です。

 自己愛性人格障害の人の治療は困難を極めます。それこそ医師もさじを投げてしまうほどに。

 ですから治療ではなく、逃げることを第一としてください。

 ただし、逃げる方法について、具体的な手順は載っていません。

 本全体の分量としては、挿絵も含めてA4用紙1~2ページ程度で収まりそうなレベル。1~数文で小刻みに改行・改ページを入れたり、小学生の作文のようなページ数稼ぎがなされています。

著者について

 著者は「精神病院勤務者チーム」と名乗っています。医師ではないでしょう。精神科医なら、そう表明するはず。

 それにタイトルでも本文でも「人格障害」と連呼しているところが、半可通くさい。この本が出版されるよりも前から、患者の人格をまるごと否定するような「人格障害」という用語の代わりに、「パーソナリティ障害」という言葉が使われるようになったのに……。

 公式サイトにもアクセスしてみましたが、中の人に関する記述がどこにもありませんでした。本名を明かさずにペンネームで本を上梓するのは珍しくもないですが、著者の経歴や環境などのバックグラウンドを本の内容の裏付けとして示すのが一般的。一切なにもまったくちっとも明かさないのは、な~んかアヤしいんですよね。「チーム」と名乗るからには複数人いるのか、あるいは実はおひとりなのかも、さっぱり分からなかった。そもそも本当に精神病院に勤務しているのか?

 その公式サイトでは、カウンセリングに応じていますが、カウンセリングの形態や料金、場所などを知らされぬまま、まずはこちらの個人情報を渡さねばなりません。う~ん、とてつもなくアヤしい

感想等

 「本を出した」という箔を付けるためだけの本のように感じました。Amazonの電子書籍Kindleなら、安価に自費出版できるんですよ。プロの編集者の目を通さずとも、なんだって出版可能。こういう本で、有料のカウンセリングとかに誘導したいんですかね。

 人目を引くため、あるいは信頼性を与えるために、タイトルに「精神病院」という単語を入れているんだと思いますが、一方で精神病院の存在意義を真っ向から否定。短い本の中に「医師もさじを投げる」という言い回しがよく出てきます。

 モラハラを引き起こす自己愛性人格障害という病気は、医師もさじを投げるほど治療が難しい病気のため、クリニックや病院に相談しても病気自体の治療は困難。

 こういう、自分の職場である「精神病院」のネームバリューを利用しつつ、その評判を落としめる態度って、信用が置けない……。そもそも「さじを投げる」のは著者の見解でしかないですよね。精神医学の研究の中で「パーソナリティ障害」と名が与えられ、診断基準が設けられ、精神療法も生み出されてきているのに。

 あ、この本の間違いだと思う記述を1か所挙げます。

 モラハラはモラルによるいやがらせ。

 モラハラは「精神的いやがらせ」のことで、モラル(道徳・倫理)と結びつけるのは間違いでは。フランス語や英語の“moral”には「精神的な」という意味もあり、モラハラの「モラ」はこちらの意味。

 『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』(レビュー)という有名な本の訳者は、まえがきで次のように述べています。

モラル・ハラスメントはそのまま訳せば、「精神的な嫌がらせ」だ。

『モラル・ハラスメント――人を傷つけずにはいられない』(訳者まえがき)

 だいたい「モラルによるいやがらせ」って、日本語として意味が分からない。モラルが備わった対応をされたら嬉しいが……。


 なんだって文句たらたらのレビューを掲載したかと言えば、Amazonのレビューではすっごい人気でビビったから。この記事の公開時点で(2023年7月4日)、421件のレビューが寄せられ、星3.9の評価がついています。

 Amazonの電子書籍の読み放題のサービス「Kindle Unlimited」に対応しているので、読む人の数が多くなるのは頷けます。それに、やっぱり「モラハラ」「精神病院」「自己愛性人格障害」といった、タイトルにあるキーワードが、困っている人の目に留まるんでしょうか。

 本の内容については、要点がまとまっていて簡単に読めて良し、といった趣旨のポジティブなレビューが数多くあります。私が感じたのと同様の薄っぺらさを指摘しているレビューも、あるにはあるが……。

 短い文章で、ずばっと言い切っているところが、良いんですかね。

 私はこのサイトで記事を書いていて、簡潔に短くまとめるように腐心しています。と言いつつ、今、本よりも長いレビューを書いてしまったかも……。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

 モラハラ対策としてはおすすめしませんが、自費出版のKindle本の悪しきサンプルを読みたい方はどうぞ

精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない

[Amazon] [レビュー]

 よろしかったら「モラハラ」の定義や、おすすめのモラハラ本について、他の記事もご覧ください。

 また、まったくもって自費出版が悪い、と言っているわけではありません。良書もたくさんあるので、私は色々読んでいます。このサイトでレビューした本の中から、優れた本を2作挙げますね。後者はのちに正式な書籍として出版されています。

スポンサーリンク

まとめ

要約

モラハラや「自己愛性人格障害」について説明。「逃げる」という対策を提示。

評価(お役立ち度)

★☆☆☆☆ (アヤしい著者が書いたアヤしいモラハラ本)

基本情報
  • タイトル:精神病院の勤務者が教えるモラハラ対策――あなたを傷つけるあの人は自己愛性人格障害かもしれない
      [Amazon] [レビュー]
  • 著者:精神病院勤務者チーム
  • 発行日:2015年3月29日
この記事で取り上げたその他の書籍

カテゴリー別人気記事

コメント

プロフィール

ロゴ

 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

タイトルとURLをコピーしました