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二世帯住宅でモラハラ夫 & サイコパス義母 & 空気義父と暮らす著者のエッセイ。
娘二人を連れて別居する計画を胸に秘める(ちょっと漏れている)。無職だった著者は仕事を始めたり、旦那や義母に言い返したり、闘ってサバイバルしている。タイトルに偽りなし!
細かく分かれたセクションごとにひとつのトピックが完結していて、簡単に読める。
レビュー
本のあらすじ・位置づけ
15歳と3歳の2人の娘と、モラハラ夫 & サイコパス義母 & 空気義父と共に、二世帯住宅で暮らす「闘う嫁」のエッセイ本です。また、最終章にて離婚の手続きについても扱っています。
モラハラ旦那・サイコパス義母に皮肉・正論を投げかけていて、痛快! 2人のお子さんもしっかりと守っています。
ただ著者は結婚当初から、そうだったわけではありません。結婚生活を通じて、旦那&義母との向き合いかたやご自身の心の持ちようを以下のように変えてきました。
- 結婚直後から
「結婚直後から、心無い言葉を投げつけられ、夫に自尊心を傷つけられた私は、自信をなくし身も心も疲れはてていました。この頃は不安で朝まで眠れず食欲も減退、過呼吸の発作にも見舞われ、何をしても楽しくない。人生で最も追い詰められていた時期です。
- 旦那&義母のとんでもエピソードをTwitterに投下しはじめてから
夫と義母のとんでもないエピソードを面白おかしくSNSで発信するうちに、「うちも同じです!」「スッキリしました!」と共感してくれる方がどんどん増えてきました。
つらいのは私だけじゃない、単純な私は日本全国に散らばるモラハラ被害者同盟のおかげで、少しずつ元気を取り戻します。そして徐々に夫と義母に反撃を開始。 - 今現在
現在は「次のお嫁さん、見つけておいたほうがいいよ」と二人に真顔で言えるほど強くなりました。
なお、著者は年単位で別居の準備を進めています。つまり仕事を始めたり、行政の支援を調べたり。それが精神的にもよい影響があるようで、前向きな記述を散見します。たとえば以下。
- 「あのとき、出ていけって言われたので出ていきます」
この決めゼリフを旦那に言う日を心の支えにしています。 - 「最後には実家と行政を頼る」
こんなふうに思ってからオレさま旦那とサイコパス義母にひどい扱いを受けても、前ほど腹が立たなくなりました。 - 「いつでもこの生活から脱出できる」そう思うとグーンと気持ちがラクに♪
構成としては、1冊の本を貫いてひとつのストーリーがあるわけではなく、細かく分かれたセクションごとに各トピックが完結しています。それぞれ4コマ漫画で始まり、文章を挟んで「本日のスカッとポイント!」で締めくくります。
スカッとポイントには、たとえばこんなことが書いてあります。
「おはよう」と「おやすみ」しか言わない旦那の日本語能力を、3歳娘がついに超えました。
(著者と長女の)親離れについて語りたいなら、自分が親離れしてからにしましょう。
元ネタはTwitter上の著者のつぶやき。非常に軽妙な語り口で、ページのレイアウトもカラー使いでオシャレ。ここで私がクドクド書くのが申し訳ない……。
本の選定理由
今の世の中、この本の著者が取っている対応策がヒントになる人も多かろう――そう思って、この本をご紹介しました。旦那がくそくそ野郎だったときに「一生付き合っていく」or「なるはやで家を出る」の二択ではなく、第三の道「こっちの準備ができてから別居する」があることをこの本は教えてくれます。また、精神的にも耐え忍ぶわけじゃなく、反撃して笑い飛ばすところがイイ!
伝統的には、行政の対応は「暴力を振るう夫 & 収入がない妻」という構図を前提に、シェルターに妻子を避難させるという画一的なものでした。また古めのモラハラ本なんかでも、最凶レベルのモラハラを前提に「モラ夫からはすぐに逃げて!」という論調。そして、別居できなければ妻は苦境を甘受するしかないかのような空気感。
しかし、いまや時代は変わりました。
モラハラという言葉が世間に広く知られるようになって、相対的にライトなモラ夫も発見しやすくなりました。そんな家庭では、取るものもとりあえず家を飛び出すメリットよりも、デメリットのほうが大きいかもしれません。
また、収入を得る方法も多様化しました。まず新しい働き方が生まれています。著者は3歳児を抱えていますが、在宅でできるライターの仕事を始めました。また、ネット証券会社の登場で、個人が投資するハードルも下がっています。

それに少なくともモラハラ界では、モラハラ野郎とよしなに付き合っていく方法論が認知されてきています(積極的にモラハラ情報をアップデートしていない世間一般では、絶対に別居・何がなんでも別居・別居一択・私だったら別居する、という意識かもしれませんが)。離婚しないモラハラ対策カウンセラーのJoeさんによる『離れたくても離れられないあの人からの「攻撃」がなくなる本』(レビュー)はベストセラーになっています。
こうした状況により、以前であれば経済的な理由から別居できなかった人が別居できるようになり、さらに別居までの猶予期間を設けられるようになってきたと思います。そんな訳で、現況に即した本をピックアップした次第です。
感想等
私はかつてモラハラ夫を置いて、長女・長男を連れて家を出ました(今は離婚済み)。子供たちの前でこそ取り繕ってはいましたが、当時の私の胸の内は悲壮感でいっぱい。
明るくていいなあ――本を読みながら、この感想が最初に思い浮かびました。完全武装・徹底抗戦・無欠の勝利みたいな強硬姿勢ではなく、こういうしなやかな強さこそモラハラへの対抗策として優れているのではと感じます。なぜなら、その方がモラ夫も凶悪化しにくいですし、こちらも精神的にポジティブになれますし。
それと、著者のご長女(中学生)の冷静な人間観察力に驚き! 彼女は父親(著者の夫)の本性を見抜いています。こうした聡明な子供だったら、モラハラの悪影響も受けにくいはず。なので「時間をかけて経済面のケアをしてから別居する」という著者の選択肢も理にかなっているように思います。
ちなみに我が家の場合、初めて私が別居することに思い至ってから、結局1年待たずに別居に踏み切りました。途中いろいろと逡巡もしたのですが、別居をなるべく急いだ理由のひとつが娘への影響です。父親の教育の結果、不健康なレベルで父親の意を汲むように成長してしまうのではないかと心配で……。
今、モラ夫がいて困っている方に、この本をお勧めいたします。読むと元気になれます。
まとめ
二世帯住宅でモラハラ夫 & サイコパス義母 & 空気義父と暮らす著者のエッセイ。無職だった著者は仕事を始めたり、旦那や義母に言い返したり、闘ってサバイバルしている。
★★★★★ (モラハラ夫への対処法が分かるし、気分もスカっとする)
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