本『子どもの脳を傷つける親たち』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★ 大人気!

脳科学の見地から子供への虐待を考える。親から不適切な扱いを受けると、子供の脳が変形することを脳のスキャン画像を用いて示す。回復するために周りの大人ができることも詳しく解説。

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レビュー

 子供への虐待について、心理学をベースにした本にはよくお目にかかりますが、この本は小児神経学・脳科学の研究をライフワークとする日本人小児精神科医が執筆しています。親から不適切な扱いを受けた人の脳と、正常な脳との比較写真(スキャンしたもの)が要所要所で掲載されています。素人の私が見ても、脳の特定の部分が委縮するなど、脳が変形して傷ついていることが分かりました。

 この本の内容について語る前に、「マルトリートメント」という用語をご紹介します。「虐待という言葉がもつ響きは強烈で、ときにその本質を見失うおそれがある」とのことで、著者の研究分野ではmal(悪い)とtreatment(扱い)を組み合わせたmaltreatmentという用語が使われており、本の中でも踏襲しています。具体的な意味合いは次のとおりです。

 これは虐待とほぼ同義ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称です。子どもに対する大人の不適切なかかわり全般を意味する、より広範な概念と考えればよいでしょう。

 さて、脳の変形について、要約している部分をこの本から引用します。

  • 子どもの脳は、マルトリートメントを受けることで変形する
  • マルトリートメントの内容(種類)によって、脳の変形する場所が違う

 そして詳細な説明がなされているセクションが続きます。以下は、そうしたセクションのタイトルです。

  • 体罰によって委縮する前頭前夜
  • 性的マルトリートメントによって委縮する視覚野
  • 暴言によって肥大する聴覚野
  • 面前DVによって委縮する視覚野

 なんだか怖い話になってしまいましたが、救いはあります。まずは、マルトリートメントを受けても、脳の変形があっても、みなが問題行動を起こしたり、心の病を得たりするわけではなく、社会に適応して生活する人もいること。さらに「第三章 子どもの脳がもつ回復力を信じて」では、専門家が行う心理療法が具体的に示されています。

 親(親代わりの大人)ができることについては、「第四章 健やかな発育に必要な愛着形成」にヒントがあります。著者が序章で「本書のクライマックス」「育て直しはこれからでもできるということをお話します」と述べているのは、この章のことです。

今の私
今の私

 うちのモラ夫でもこの本の提言なら聞き入れるかもしれない。目に見えない「心」の傷を訴えるのではなく、目に見える「脳」の傷を明確に示しているんだから。それにモラ夫が気にする学習面への影響も語っているし。――かつて(別居前に)、私はこのような期待を抱きました。しかし面と向かって勧めても、モラ夫の机の上にこの本を置いても、モラ夫は手に取ることすらなかったです。

 渡し方を工夫しても、「私から」勧めるのではダメだ、と今なら分かります。

 後になって、男性読者をターゲットにしているNHK出版新書から、あえて出版されたことを知りました。私の中でも、いわゆる「毒父」に読んでもらいたい本のナンバーワンです。読ませるまでに策略を練る必要があるかもしれませんが、男性が好みそうな科学的な裏付けがばっちりと示されています。

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まとめ

要約

脳科学の見地から子供への虐待を考える。親から不適切な扱いを受けると、子供の脳が変形することを脳のスキャン画像を用いて示す。回復するために周りの大人ができることも詳しく解説。

評価(お役立ち度)

★★★★★ (説得力のある材料がたっぷりとあった)

基本情報
  • タイトル:子どもの脳を傷つける親たち
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  • 著者:友田 明美(小児精神科医)
  • 出版社:NHK出版
  • 発行日:2017年

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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