★★★★★ 世界的ベストセラー
周りを取り巻く人や物事の見方が変わる!
レビュー
これは心理学や自己啓発に関する本です。哲学者(第一人者)の岸見 一郎氏と、ライター(超一流)の古賀 史健氏が共同で執筆。2013年に発行されたのち各国語に翻訳され、国内外でロングセラーを記録しています。
冒頭にはこの本について端的な説明があります。以下、引用です(太字は原文のとおり)。
本書は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊です。
哲人は「世界は信じがたいほどシンプル」「人は誰でも今日からでも幸せになれる」と説く哲学者。論破しようと、青年が哲人のもとを訪れます。そこから両者の対話形式で、アドラー心理学のエッセンスが紐解かれます。
1週間、2週間、あるいは1カ月ほどの間を挟みながら、青年は五夜に渡って哲人の部屋の扉をノックします。
この本は最近はやりのサクっと読める本とは対極にあります。対話形式という体裁など表面的には分かりやすい工夫が施されていますし、私が抱いた疑問点を代わりに青年が哲人に問い質してくれます。ただ内容が奥深い! 私は読み進める前に考え込んでしまうことがしばしば。発行当初に購入してから繰り返し目を通していますが、今回レビューを書くに当たって再読した際にも新たな気付きを得ました。
この本は私に、周りを取り巻く人や物事の見方を教えてくれました。私が持っている良書の判定基準に「我が子が大人になったときに読ませたい本かどうか」というポイントがあります。この本は間違いなく、その中の一冊です。
しかし、この本、あるいはアドラー心理学の核心をうまく語る勇気は持てません。代わりに、このサイトでご紹介する理由を述べます。
このサイトではDVや虐待などで家族に悩みを持つ方に向けた情報を扱っています。そうした方がこの本を読めば、モラハラ本やDV本とは違った側面から、何かしらヒントが得られると思いました。
哲人はこの本の中でアドラー心理学の根底に流れる概念として「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と紹介。そして青年は親に葛藤を抱えており、哲人も同様だった(過去形)のです。関連の記述を引用します。
青年 (略)うちの両親は厳しい人たちでした。前回もお話ししましたが、常に兄と比較し、わたしを認めようとしなかった。そしてわたしの人生についても、ずっと口を挟み続けてきました。もっと勉強しろ、そんな友達とは付き合うな、最低でもこの大学に行け、こんな仕事に就け、といった具合で。その要請は大きなプレッシャーでしたし、まさしく「しがらみ」でした。
哲人 わたしの記憶にあるのは、父から殴られたときの映像です。具体的に、なにをしてそうなったのかは覚えていません。ただわたしは父から逃れようと机の下に隠れ、父に引きずり出され、強く殴られました。しかも一発ではなく、何発も。
ただ、この本に対する読者の反応の中には、私と正反対のものも見かけます。哲人の言によれば「アドラー心理学には、常識へのアンチテーゼという側面があります」とのことで、受け入れられないケースも想定内かもしれません。私自身も細かい点で腹落ちしない部分があります。
なお、およそ3年後に続刊『幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII』が発行されました。当初から二部作にすることを想定。売れちゃったから続編を出した、という類のものではありません。合わせてご紹介します。
表紙 | 本 |
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![]() | 嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え 2013年発行。「青年」と「哲人」の対話形式でアドラー心理学を説く [Amazon |
![]() | 幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII 2016年発行。『嫌われる勇気』の続編 [Amazon |
自己啓発本というと、ビジネスパーソン寄りのイメージがありますが、この本はもっと普遍的なものです。人間関係、特に家族との関係にお悩みの方におすすめいたします。
まとめ
アドラー心理学を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊
★★★★★
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