本『夫が怖くてたまらない』のレビュー

おすすめポイント

★★★★★

日本および米国で実施した綿密な調査と豊富な取材に裏打ちされた、DVについてのルポルタージュ。

DVに関する幅広い情報が体系的に得られる。

レビュー

 この本はDV(モラハラを含む)に関する幅広いトピック独自の視点で扱っています。

 著者の肩書は「ノンフィクション作家」「放送作家」。DV本・モラハラ本の著者としては、あまりお見かけしませんよね。1994年に著者は親友からDV被害を打ち明けられます。それをきっかけに、日本および米国でDVに関する調査・取材を敢行。さらに結果をまとめて書籍・雑誌などで発表します。

私

 すごいパワー!
 ご友人も心強く感じたでしょうが、広く世の中に有意義なことだと思います。

 目次に、私の一言を添えて、本の内容をご紹介します。

  • はじめに
  • 序章 ← 親友の香澄(一人息子がいる)からの、壮絶なDV被害の告白
  • 第1章 なぜ逃げられない 知られざるDVの真実 ← 被害女性について
  • 第2章 男たちはなぜ殴るのか ← 加害男性について
  • 第3章 子どもたちの苦悩 ← DV家庭で育つ子供について
  • 第4章 DV防止法後も変わらない「いい妻」の呪縛 ← 日本の社会の動き
  • 第5章 モラハラという虐待 ← モラハラについて
  • 第6章 暴力の鎖を断ち切るために ← 日米の、加害男性と子供に向けたプログラムの紹介
  • 第7章 DV根絶を目指す、アメリカのリーダーたち ← 主に米国の被害者支援について
  • 終章  香澄のその後 ← 香澄がDVから脱するまでのストーリー
  • おわりに

 「怖くてたまらない」というタイトルから、感情面にフォーカスした本かと思いましたが、全然違いました。綿密な調査と豊富な取材に裏打ちされたルポルタージュです。

 DV被害者である親友の体験談で始まり、体験談で締めくくります。間には、日米両国で行った、被害者、その友人・知人、さまざまな形で被害者・加害者に関わる人々への取材がたっぷり。たぶん難しいことも書かれているのですが、ぐいぐい読ませます。やっぱりプロの物書きさんは違う、って思いました。

 この本について「ベースになったのは、DV防止法の成立(2001年)前後に出版した書籍や、折に触れて雑誌に発表したルポなど」で、「今回の出版(2016年)にあたり大幅に編集を加えた」とのこと。かつての警察のDV対応なんかには隔世の感があります。しかし被害者・加害者・子供の心理や社会の潮流など、今でも通じる、意義深い記述が盛りだくさんでした。

 想定読者として、この本では第一に被害者、2番目にその知人・友人、最後に保護・支援を行う専門家を挙げています(以下)。

 本書は暴力から「逃げる」ための実践的なマニュアルではなく、被害者に「気づき」を促すものである。
(略)
 夫や恋人との関係に悩んでいる人、知人・友人にDV被害者がいる人に、読んでいただければ幸いである。また、被害者を保護、支援する側のみなさんには、アメリカのDV対策における女性リーダーのパワフルな活躍ぶり、脱暴力のためのプログラムや暴力防止教育の内容なども参考になるのではないだろうか。

 私としては、社会全体を住みやすい方向へ導くパワーのあるエラい人が読んでくださったら、と思いました。この本では、ビル・クリントン大統領(当時。かつてDV家庭で育った)がDVの撲滅を誓ったスピーチや、国家財政という面からDV根絶を目指すアメリカの取り組みなどを紹介しています。

 DV被害の渦中にいる方にとっては、冷静な筆致が、自分を俯瞰的・客観的に見る手助けになります。

 他のDV本・モラハラ本とは毛色が異なるこの本。ぜひご一読ください

まとめ

要約

日本および米国で実施した綿密な調査と豊富な取材に裏打ちされた、DVについてのルポルタージュ。

評価(お役立ち度)

★★★★★ (DVに関する幅広い情報が体系的に得られた。他の本には無い情報もいろいろあった)

基本情報
  • タイトル:夫が怖くてたまらない
  • 著者:梶山 寿子すみこ
  • 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発行日:2016年6月20日

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プロフィール

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 ある日、私は2人の子供を連れて、モラ夫から逃げて別居しました。私自身と子供を守るためです。

 私は年間100冊程度の本を読んでいます。好きなジャンルはファンタジーですが、多読しているのは実用書です。

 このサイトを訪れた方が、少しでも生活を改善したり、気持ちを前向きにしたりする情報を得られたら幸いです。

望木 幸恵

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