離婚調停や離婚裁判に有用な「証拠」の集め方に力点を置いて「財産分与・慰謝料・親権に強い弁護士」が離婚の前後の手続きを解説。
レビュー
この本では、離婚手続きについて弁護士が一通り解説しています。中でも詳しく取り上げているのは、「離婚調停・離婚裁判を有利に進めるための証拠」です。2つの軸に沿って、証拠の種類や集め方、注意点を詳しく紹介しています。
1つ目の軸は法的に認められている離婚理由別(以下)です。
- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
もうひとつの軸は争点別で、事例の紹介も交えています。たとえば「多額の借金」「性格の不一致」「不貞」「親権」「財産分与」など。これ以外にも多数の争点が挙がっています。
モラハラ本やDV本では読者に対する労わりの言葉が頻出しますが、この本からはそうした心理的な癒しは得られません。しかし実用上は、私が子連れでモラハラ離婚をするにあたり大いに助けになりました。
この本の良かった点について、3つ挙げて詳述します。
1)身体的暴力やモラハラによる離婚で使える証拠について解説
「身体的暴力」「モラルハラスメント(精神的暴力)」というセクションが独立して用意されています。
数年前には、調停委員や弁護士などの法曹関係者にモラハラを理解してもらえない、と言われていました。しかし今は、先人のおかげでそのようなことはありません。
あとは、個々の夫婦間でモラハラ・DVの問題があったのか、それはいつからなのか、と個別に実態を認定してもらうだけです。それに必要な証拠が載っています。
2)法的な側面で網羅的な離婚情報が得られる
この本は証拠集めだけを取り上げているわけではなく、離婚前の決心・準備から、離婚後の手続きまでが守備範囲です。特に良かったのが、自分の意思や置かれている状況を書き込めるフォームが掲載されていることです。著者は「離婚は計画的に」というセクションで次のように述べています。
離婚に向けて書類や証拠集めをするためには、あなたの現状を把握し、これからどうしたいのか気持ちを整理することが大切です。家族について、子どもについて、財産について、慰謝料についてなど、どうしたいのかを確認し調べましょう。
3)目次が充実していて、必要なページにアクセスしやすい
13ページを割いて詳細な目次が載っており、必要な情報にアクセスしやすくなっています(たまにスッカスカの目次の本もあり、イラっとする)。実用書はこうでなければ! ご自身の離婚の争点にならないところは、読み飛ばせます。
この本の著者は同じ法律事務所に所属する弁護士たちです。
著者陣は2016年に『少しでも有利に離婚したいならきっちり証拠を集めなさい――幸せになるための別れ方』という、パンチの効いたタイトルの本を上梓しています。このコンセプトを受け継いで、2019年に新たに発行されたのが、この『キッチリけりがつく離婚術』です。
離婚を考えているすべての人に、この本の内容は役立ちます(自分が有責でも離婚したい人も含む)。
別居・離婚を決意していなくても、ちょっとでも離婚が頭をかすめるのであれば、一読することをお勧めします。離婚の意思を相手に知られる前のほうが、この本の情報を有効活用できます。
まとめ
離婚における証拠の重要性をふまえて、どのタイミングでどのような証拠を収集しておくことが望ましいのかを豊富な事例を用いて解説。離婚前の準備から、離婚後の手続きまで網羅的に取り上げる。
★★★★★ (モラハラ離婚・DV離婚にも言及)
- 少しでも有利に離婚したいならきっちり証拠を集めなさい――幸せになるための別れ方
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