★★★★☆
罪悪感や不安感、戸惑い、怒りを抱きながら、親の離婚後の、変化の多い生活を送っている女の子の物語。理想論ではない話がつづられる。
とりまく状況が同じお子様におすすめ。幼児向け。
レビュー
この本は実話が元になっています。ニューヨークのソーシャルワーカーが、カウンセリングに応じた6歳の子供(3歳のときに両親が離婚)をケアするためにお話を描き、それが絵本になりました。離婚後の生活にフォーカスが合わせてあり、親の離婚前に子供に説明するためというより、離婚後に心理的な辛さを感じている子供に向いています。
主人公のジェイニー(女の子)はパパやママと犬のファニーと楽しく暮らしています。ある日突然、パパが家からいなくなり、その他の面でも生活が変わっていきます。ジェイニーは罪悪感(わたしが悪い子だから)や不安感(ママも遠くへ行ってしまうかも)、怒り、戸惑いを抱きながら、親の離婚後の生活を送ります。
幼児向けの離婚本はだいたい物語形式になっていて、子供に理想的な対応をする両親が登場します。子供の不安や心配の描かれ方は抑制的です。それに勇気づけられる子供もいるでしょうが、本の主人公と自分の状況や気持ちが乖離しすぎていると、反って子供に疑問や不信が生じるかも……? 実際、我が家の事情にマッチせず、子供に渡せなかった絵本もあります。色々な環境にいる子供のために、各種パターンの離婚物語があるといいのになあと思っています。
この本は、そうした教科書通りではない形態のひとつを表しています。とはいえ、お話の終盤で事態が好転し、ママもパパもおばあちゃんも、ジェイニーへの対応が変わります。離婚が取り消しになるようなことはありませんが、ジェイニーはずっと暮らしやすくなります。
なお、カラーの絵ではなく白黒のイラストが添えられています。好みが分かれるかもしれませんが、私には残念なポイントでした。大人向けのアートな作品ではマッチするかもしれませんが、子供にはちょっと……。
この本は、離婚やその後の生活の変化について、幼い子供にもきちんと説明することの大切さを、大人に教えてくれます。また、ジェイニーと同じような状況にいるお子様におすすめします。
なお、以下の記事に子供向けの離婚本の一覧表を掲載しています。よろしかったらご確認ください。
「パパとママが別れたとき……」シリーズ
同じシリーズの、他の2作の絵はカラーです。
表紙 | 絵本 |
---|---|
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まとめ
罪悪感や不安感、戸惑い、怒りを抱きながら、親の離婚後の、変化の多い生活を送っている女の子の物語。理想論ではない話がつづられる。
★★★★☆ (絵が白黒なので星ひとつ減。物語は胸に迫る)
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