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大学時代に発達障害と診断された著者が編み出した生活術の本。
誰でも実践できる。
自分を変えるのではなく、やり方・環境・道具などを変える
レビュー
本のあらすじ
大学時代に発達障害と診断された著者が編み出した生活術の本。自分の努力、やる気、根性、スキルアップなんかには一切頼らずに、仕組みややり方を工夫することで対処。つまり、自分自身を変えるのではなく、自分を取り巻くあれやこれやを変えます。そのノウハウが47個詰まっている本です。
この素晴らしき方針に言及している部分を、本から2か所引用します。
僕のライフハックのテーマは「自分を変える」のではなく、「やり方を変える」「環境を変える」「道具を変える」など、パーソナリティの外部にあるものを工夫することで変化を起こすことをモットーにしています。
(略)あなたはあなたのままでいいと僕は思います。あなたが変わるべきだと、僕は決して思いません。
あなたのやり方やあなたの道具、あなたの環境を変えるべきなのです。人生がうまくいかないとどうしても発生してくる自罰的感情、「自分が悪いのだ、自分が根本的に変わらなければならないのだ」というあれは、あなたを救いません。
ひとつひとつのノウハウは「Hack(ハック)」として提示。以下の8つの章に分けて、合計47個のハック(最後の1個はSpecial Hack)を紹介しています。
- CHAPTER 1 生活環境――サバイバルに絶対必須の設備ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【生活環境編】 「設備投資できない病」がすべてを狂わせる
- CHAPTER 2 お金――貧困と借金から学んだマネーハック
- 発達障害サバイバルの大原則【お金編】 必要なのは「金を稼ぐ」技術より「貧乏でもやっていく」技術
- CHAPTER 3 習慣――くりかえしが苦手な僕らの365日ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【習慣編】 生活の「スタートコスト」を下げろ
- CHAPTER 4 在宅ワーク――だらだらに勝つ自宅作業ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【在宅ワーク編】 よき日常があってこそ、よき仕事がある
- CHAPTER 5 服――おしゃれとか以前の身だしなみハック
- 発達障害サバイバルの大原則【服編】 服に「センス」は必要ない
- CHAPTER 6 食事――ずぼら完全対応版自炊ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【食事編】 レシピがだるくて覚えられないあなたへ
- CHAPTER 7 休息――生き延びるための休日ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【休息編】 働かなくても休むことができるが、休まなければ働くことはできない
- CHAPTER 8 うつ――不安とともに生きる再起ハック
- 発達障害サバイバルの大原則【うつ編】 「どん底から再起する」技術を身につけよう
たとえばHack 01では、汚れた食器を台所に積み上げてしまう代わりに、食洗器を導入することを提案。
また、最後のSpecial Hackでは「うつの底」にいる読者に、「何もするな、この本も読むな」「何もしないというのは、意志ある行動です」と説いています。
本の選定理由・本の位置づけ
「(このWebサイトのテーマである)モラハラ」と「発達障害」の関連性が論じられることがあります。たとえば発達障害のせいで相手の感情を推し量ったり相手に共感したりするのが苦手で、モラハラ的な言動が出てしまう、といった具合です(念のため「発達障害者=モラ夫・モラ妻」とは言っていませんよ)。
私がこの記事を書いたのは、大人の発達障害者に絶大な支持を得ているこの本が、モラ家庭での生活にも役立つかもと思ったからです。

本の位置づけとしては、モラハラ界の『離れたくても離れられないあの人からの「攻撃」がなくなる本』(レビュー)という書籍と似ています。「発達障害とは」「モラハラとは」なんていう知識はさておき、どうやって生活していけばいいのか、具体的な対策や気の持ちようが分かります。しかも、シンプルで取り組みやすいことだけ。
かくいう私も、離婚したモラ夫に発達障害の影響を感じることがありました。結婚当初は何とも思いませんでしたが、子供が生まれたのを境に「発達障害」という言葉や情報に触れる機会を得てからですね。
ヤツはですね、家事をまったくと言っていいほどやりませんでした。「家事」なんて高度なことのずっと手前でつまずいています。自分の小さな部屋ひとつ、いや机の上さえ管理できず、ゴミとモノが混然一体に。チラシ・書類・本・何かの箱・タオルなんかでひとつの山を形成。飲みさしのペットボトルにはカビが繁殖。ついにモラ夫部屋の容量がいっぱいになり、徐々に家族の共有スペースに浸食するヤツの私物。
発達障害の脳のクセで、同時並行的な処理は苦手。ゴミを捨てたり、必要なモノはそれぞれ適した場所にしまったり、「片付け」は色んなことを同時並行的にやらねばならないので、難しい作業――こうした趣旨のことが書いてある記事を読んだとき、「ウチのモラ夫にも当てはまるんじゃないかな」と思いました。
当時、この本があったならば“Hack 04「ぶっこみ収納」で、汚部屋から脱出せよ”あたりの情報が役に立ったと思います。たとえば座る場所のすぐそばにデカいゴミ箱を置く、とか。まあ、今は別居・離婚済みなんで、ヤツの家がどうなろうと、もはや知ったこっちゃないんですが。
感想等
発達障害と診断されたことがあるかどうかに関わらず、誰にでも役に立つ内容だと思いました。
日々の生活を送る上で不得手なことって、誰しもありますよね。部屋が片付かない。洗濯物を畳めない。朝起きられない。忘れ物をする。やるべきことを先延ばしにする。夜更かししちゃう。などなど。
ついついモラ夫(元)の苦手分野に目がいってしまったんですが、この本の何がいいって「本人にやる気がなくても、こちらが環境を変えたら、自然とできるようになる」、そう思わせてくれるところです。
なので、ちょこちょこ宿題をすること自体を忘れてしまう我が子にも、良さそうなハックがありました。
すっかり自分のことを棚に上げていますが、私が家事の中でもっとも苦痛を感じるのは「掃除」です(モラ夫ほどじゃないけど)。子供の手前、最低限は片付けなければと、気力と体力を振り絞っています。この本の中に、楽にやるアイデアがいくつか見つかりました。手法自体は本とまったく同じにする必要はないでしょう。この本のポイント「自分ではなく仕組みや道具を変える」ことを念頭に、カスタマイズして取り入れようと思っています。
モラ夫・子供・ご自身の生活をラクにするために、ぜひご一読ください。
まとめ
大学時代に発達障害と診断された著者が編み出した生活術の本。
自分の努力、やる気、根性、スキルアップなんかには一切頼らずに、仕組みややり方を変える
★★★★★ (誰でも実践できる)
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