★★★★★ ロングセラー
「子どもの権利条約」の条文を2人の女子中学生(当時)が翻訳したもの。
親からヒドい扱いを受けていてもヒドいと気付いていない子供にも「親が子供を虐待するのは悪いこと」という価値観が伝わる。
漢字にはふりがなが振られており、小学生(高学年)でも読める。
レビュー
本の内容・構成等
「子どもの権利条約」の日本語訳です。平易な日本語で書かれ、漢字にはルビが振られているので、子供でも分かりやすい。翻訳したのは、2人の女子中学生(当時)! 以上がタイトルの所以です
ページ下部に日本政府による、おカタい訳文も併記されていますが、もはや別物のよう。一例を挙げます。
このサイトではDVやら児童虐待やらを扱っているので、関連する条文をピックアップします。「虐待」を“ひどいこと”という言葉に置き換えて、第19条を次のように表しています。
第19条 親から痛い目に、ひどい目にあわされるなんて。
1 ぼくら子どもだって、人間だ。
痛い思いをするのはいやだ。
いやな思いもしたくない。
ほうっておかれたくない。
むりやり働かされたくない。
もし、お父さんお母さん、それに代わる人が、
そんないろんな“ひどいこと”をすることがあれば、
国は、法律をつくるのはもちろん、
そのほかにもそういうことを防ぐために、
できることは、
みんなやってほしい。
日本政府による、正式な訳文は次のとおり。
第19条
1 締結国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。
「締結国は児童のために○○を行う」という条文を「ぼくら子どもはこう感じるから、国に〇〇してほしい」と、視点を子供に変えて訳出しています。このテクニックのおかげで、子供にも条約の大切な要旨が伝わりやすいです。
感想等
私は母親の立場で、この本を子供(小学生)に勧めました。私にとってのモラハラ夫は、子供にとっての毒父でした(現在は別居・離婚済み)。

我が子にはモラ夫のモラモラ攻撃がある生活が普通で、「父親から受けている扱いはひどい」「うちはおかしい」という認識をまったく持っていませんでした。かく言う私も、モラハラに気付くまでにだいぶ時間がかかりましたが……。
この歪んだ価値観を正すために、虐待されている子供向けの本をチェックしまくりました。しかし、そうした本を子供に渡すということは、「あなたは虐待されている!」と突き付けることになるので断念。代わりに、被虐待児に限らず子供一般に向けた本で、虐待を扱っているものを探しました。
虐待に関して子供に正しい価値観を伝えたい、という私の用途に、この本は最適でした。
また 子連れ別居に関連する記述もありました。
第9条 お父さんお母さんとは、いっしょにくらしたいんだ。
1 ぼくら子どもは、
お父さんお母さんと、はなればなれになりたくない。
だけど、お父さんかお母さんと、あるいは両方と、
はなればなれになることが、
ぼくらのためにいちばんいいときもあるかもしれない。
たとえば、お父さんお母さんが、
ぼくらをらんぼうにぶったり、けったり、
ひどいことをするときとか、
お父さんとお母さんがべつべつにくらしていて、
ぼくらがどこでくらすか決めなきゃなんないとき、
とかね。
子供の人権全般を扱っているので、家庭内の虐待(DV)だけでなく差別やいじめによる人権侵害の防止や、難民や戦火の子供の人権保護も訴えています。
1995年発行のロングセラー。小学生でも読めます。内容をぜひご確認ください。
まとめ
「子どもの権利条約」の前半部分(第43条の途中まで)の翻訳。
2人の女子中学生(当時)が子供に分かりやすい表現で超訳。人権団体アムネスティ・インターナショナルの日本支部が主催した翻訳コンテストで最優秀賞を受賞した作品。
★★★★★ (小難しい条文の理解のしやすさでは他に比類なし)
コメント