神話・誤解
父親には親権が認められにくい。
真実
育児・子供の教育を主に担ってこなかった人に、親権が認められにくい。
未成年の子供がいる場合の離婚において、母親が子供の親権を得るケースのほうが、父親のケースよりも圧倒的に多いです。事実としてはそうなんですが、これは親の性別が理由なのでしょうか?
この記事では複数の統計データを引用して、考察していきます。なお、全体像について語るのであって、実際に父母のどちらが子供の親権を持つのがふさわしいかは、個々のケースごとに議論が必要だと思っています。
統計データ
父親が親権を得る割合は?
まずは、離婚に際して妻と夫のどちらが実際に子供の親権を得ているのか、統計データをご紹介します。厚生労働省の令和元年(2019)人口動態統計(確定数)における「親権を行う子をもつ夫妻の親権者(夫-妻)別にみた年次別離婚件数及び百分率」という調査から引用します。
離婚後の子供の親権
【適用】
■ 妻がすべての子供の親権を持つ
■ 夫がすべての子供の親権を持つ
■ その他

70年以上前の1950年には、夫48.7%・妻40.3%と、夫が親権を持つ割合のほうが上回っています。かつては跡取りみたいな考えがあったり、妻に経済的な問題があっても福祉制度が充実していなかったりで、夫側が子供の親権を持つことも多かったんですね。
以降、年を経るごとに妻が子供の親権を持つ割合は漸増していきます。ここまでで分かることは、子供の親権の獲得において伝統的に母親が有利だったわけではない、ということです。
そしてここ10年ほどは妻85%弱、夫12%弱で安定しています。数字の上では明らかな偏りがありますが、これは不当なことなのでしょうか?
母親よりも多く育児を担う父親の割合は?
離婚する夫婦間で子供の親権について決着がつかず裁判所で調停を行うことになると、「子供の利益」を念頭に話が進められます。法務省のWebサイトから「親権」について言及している部分を引用します。
Q1 親権とは何ですか。
(A)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00015.html
「親権」とは,子どもの利益のために,監護・教育を行ったり,子の財産を管理したりする権限であり義務であるといわれています。親権は子どもの利益のために行使することとされています。
調停離婚の際に「子供の利益」のために重視されるポイントは、それまで夫婦のどちらが主に子供の監護を担っていたか、ですね。
ここで、夫婦のどちらが子の育児により関与しているのかを調査した結果を提示します。内閣府 男女共同参画局が発行した「共同参画」2020年9月号からの引用です。「夫婦の間で育児・子供の教育を行うのはどちらですか?」という質問に、妻5,486人・夫5,486人(男女同数)が回答しています。
夫婦の間で育児・子供の教育を行うのはどちらですか?
【適用】
■ 妻
■ どちらかというと妻
■ 同程度
■ どちらかというと夫
■ 夫
■ どちらもしない

※ 下側のバーは「どちらもしない」を除いて、 妻・同程度・夫の3つのカテゴリで割合を示したもの
「どちらもしない」という回答は、子供のいない夫婦などですね。こうした回答を除いて、妻(「どちらかというと妻」を含む)・同程度・夫 (「どちらかというと夫」を含む) の3つのカテゴリで割合を示したものが、上図の下側のバーです。妻の方が主体的に育児・教育をしていると回答した人が70%弱、夫の方が主体的に行っていると回答した人が5%弱と、圧倒的な差があります。
つまり、根拠が薄いまま母親に親権が認められているわけではなく、実際に母親が子供の養育を担っているケースが大半なのです。
どちらに引き取られたほうが、親の離婚を良かったと思える?
そして、母親または父親が親権を持つことが、実際に子の利益に結びついているのかどうかを示唆する統計データもあります。法務省が今年(2021年)に公表した『未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査・分析業務報告書』(レビュー)から引用します。この報告書では、子供の頃に両親が離婚した20代・30代の男女250名ずつ(計1,000名)に、親の離婚について、さまざまな問いかけをしています。
両親の離婚・別居について、大人になった今振り返ってみると、自分および親にとって良かったか良くなかったか――今回取り上げるのは、この質問です。両親の別居以降、父親と母親のどちらに引き取られたかで、回答結果が異なります。以下、ご覧ください。
父母の離婚・別居について、今振り返ってみると、どのように思いますか。

(単位:%)
■ 父母にも自分にもよかった
■ 父母にとってはよくなかったが、自分にとってはよかった
■ 父母にも自分にもよくなかった
■ 父母にとってはよかったが、自分にとってはよくなかった
■ 特になし
グラフでは、両親の離婚が自分にとって良かったと思う人を水色(濃い色と薄い色)、自分にとって良くなかったと思う人をオレンジ色(同)で示しています。ぱっと見で分かると思いますが、父親に引き取られた場合「よくなかった」と思う子供のほうが多く、母親に引き取られた場合は「よかった」と思う子供のほうが多いです。
■ 父親と同居した場合
よかった 27.6% (23.4+4.2) < よくなかった 35.0% (15.4+19.6)
■ 母親と同居した場合
よかった 33.2% (29.6+3.6) > よくなかった 20.1% (7.6+12.5)
つまるところ、子の利益に結びついているかという観点からは、父親が子供を引き取ることはネガティブな因子となっています。
現在、父親が親権を得るケースが少ないからと言って、やみくもに増やす方向へ持っていくようなことはあってはならないでしょう。
我が家のコト
そもそも私がこの記事を書こうと思った理由は、モラ夫(離婚済み)の勘違いにきっちり反論して、スッキリしたかったから。離婚調停・裁判でヤツが主張してきたあんなことやこんなことを思い出すと、鼻で笑っちゃいます。実際には、離婚が成立して、もはや直接会うこともないでしょうが、私にはこのブログと言う、毒を吐き出すにはぴったりのツールがある!
と、いうわけで、「モラ夫の主張 ← 私の反論」という形で、3つほど書いていきます。ちなみに、小学生の娘と保育園児の息子の親権を争いました。モラ夫の主張は調停委員経由で聞くこともあれば、パパ友・ママ友を経由して耳にすることもありました。
- モラ夫のほうがメインで子供を監護していた ← 娘の塾の送り迎えをしたり、娘の家庭学習に張り付いていたことで、娘といっしょにいた時間は長かった。が、それは監護ではない。衣食のケアや、病院の付き添いなんかはしていない。あと、息子のことはノータッチだよね
- 母親(私)に子供を連れ去られて監護実績を積まれた ← 別居する前から、私の監護実績は山盛りあって、モラ夫にはまるで無かった。モラ夫にバレずに、子供の転校・転園ができたことが、その査証。モラ夫がまったく小学校・保育園に関わってこなかったから楽勝だった
- 制度上の問題があって、父親だから親権を取れなかった ← モラ夫自身に問題があって、親権を取れなかった。今の日本でも、父親でも親権を取っている人が1割はいる。それに、共同親権制度の国でも、毒親には親権は認められない
まとめ
- 伝統的には父親が子供の親権を得るケースのほうが母親よりも多かったが、現在は(2019年度)父親がすべての子供(未成年)の親権を得る割合は11.9%
- 自分の家庭では妻よりも夫のほうが育児・子供の教育を担っていると考えている人は4.6%
- 両親の離婚について成人後に振り返ると、母親に引き取られた子供のほうが「よかった」と思う割合が高い
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