★★★★★ ロングセラー
DVで受けた心の傷に直接はたらきかけ、回復へと誘う。DVがつらい・つらかったと認識している方に。女性向け。
レビュー
DVで受けた傷がつらいと認識している方に向けた、回復のための「ワークブック」です。裏表紙に「こんなふうに感じている方へ」と、対象読者が列挙されています。その中から2つ挙げます。
- 過去の悲しみから立ち直りたい
- 一緒にいるのがつらい。でもパートナーから離れられない
一般的なDV本が教科書だとすると、この本は演習用のドリルです。書き込む欄が設けられており、また具体的な記入例も列記されるなど、取り組みやすくなっています。
著者は「NPO法人 レジリエンス」という、DVからの回復を支援する団体。
本は以下の3章構成です。
- 1章 DV・トラウマを理解する
- 2章 暴力の影響を乗りこえるには
- 3章 自分らしく輝くためには
全編を通じて優しさにあふれています。たとえばDVサバイバー(被害者)のことを、敬意を込めて「☆さん」と表記。「被害者」「被害者」と連呼されることはなく、前向きな気持ちになりやすいです。
DVについての説明は、分かりやすくて正確です。一例を挙げると、暴力の種類として、身体的暴力・性的暴力・精神的暴力・経済的暴力の図を掲載して、以下の解説を加えています。
身体的暴力と性的暴力が重なっているのは、性的な部分が身体の一部であるためです。そして全体を「精神的暴力」がおおっているのはどの種類の暴力であっても受けた側の精神に深い傷が残ることになるためです。
DV防止法などでは、こうした暴力の種類を並列に並べて論じています。しかし実際には、それぞれ独立しているわけではなく、絡み合っているということがよく分かります。
また「DVのある家庭の子ども」というセクションが設けられており、同時に子供のケアも考えることが可能。ちなみに「子どもの回復につながる環境」の1つ目に「母親の回復」が挙げられています。
なお、続刊として『傷ついたあなたへ 2――わたしがわたしを幸せにするということ DVトラウマからの回復ワークブック』も発行されています。
DVによる辛さを抱えている方の心の傷に、直接的にはたらきかけます。ぜひお手元に置いてください。
まとめ
DVで受けた傷がつらいと認識している方に向けた、回復のための「ワークブック」。DVに関する解説があり、自分自身の分析や回復のための簡単な作業を行うように設計されている。
★★★★★ (直接的に心の傷にはたらきかける)
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